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NTT/阪大/NII、量子メモリーの原理実験に成功

October 14, 2011, 東京--日本電信電話(NTT)と大阪大学、大学共同利用機関法人 情報・システム研究機構 国立情報学研究所(NII)は、超伝導人工原子(超伝導量子ビット)とダイヤモンド結晶中のスピン集団(窒素不純物と空孔とからなるNV中心数千万個)を組み合わせたハイブリッド系を作り、エネルギー量子1個を交換する量子もつれ振動をコヒーレントに制御することに世界で初めて成功した。
これは、超伝導量子ビットの重ね合わせ状態をダイヤモンド結晶中のNVスピン集団へ保存した後に再び読み出せることを意味しており、量子通信や量子情報処理に欠くことのできない、任意の量子状態を保存可能な量子メモリーの実現にとって、ダイヤモンドが極めて有望な候補であることを実証したものとNTTなどは説明している。
量子コンピュータの構成要素である量子ビットの候補として、人工原子の一種である超伝導量子ビットや、原子や電子スピンといった天然原子の量子ビットの研究が盛んに進められている。
超伝導量子ビットではマイクロ波光子あるいは素子間での強い結合を比較的容易に実現でき、高速な量子演算が可能なものの、コヒーレンス時間と呼ばれる量子性を保てる寿命が短いという問題があった。一方、天然原子の量子ビットは、コヒーレンス時間は長いものの、それ自体が非常に小さいため、個々の原子や電子スピンへ情報を書き込んだり、取り出したりする操作が難しいという欠点があった。
NTT、大阪大学、NIIでは、超伝導量子ビットと天然原子の量子ビットを組み合わせたハイブリッド系の量子状態を使えば、互いの長所を活かした制御が簡易であり長寿命な量子プロセッサが得られる可能性があると考え、研究を進めてきた。
NTTは超伝導量子ビット状態を高精度に制御・観測する最先端の実験技術、大阪大学はダイヤモンド結晶中のNV中心を生成・観測する優れた技術、また、NIIは優れた理論解析を行う技術と能力を持っている。理論を担当したNII根本香絵教授は、従来よりNTTとの共同研究者であり、これら3つの研究グループ間で相補的な共同研究を行い、今回の成果を得ることができた。

研究成果
ダイヤモンド結晶中の窒素不純物と空孔が作るNV中心の約3000万個のスピン集団と超伝導量子ビットを組み合わせてハイブリッド系の量子状態を作り、2つの異なる巨視的な物質間に量子もつれ状態を生成することに世界で初めて成功。
今回の研究成果を応用することにより、操作性に優れる反面非常に壊れやすい超伝導量子ビットの量子状態を、NV中心ダイヤモンドのスピン状態に保存することが可能になる。長時間安定した量子メモリーは、超伝導量子ビットで高速「量子プロセッサ」を作る要の技術の一つであるため、今回の結果は量子情報処理の実現へ向けた道を拓くものと言える。
また、超伝導量子ビットとスピン集団のハイブリッド系を用いた量子もつれ生成の成功により、これまでマイクロ波長帯と光学通信波長帯間での量子的な情報のやり取りは不可能だったが、波長の大きく離れた光信号間で量子的な情報のやり取りの橋渡しを行う量子ネットワークの基本素子開発へ大きな一歩を踏み出した重要な成果であると考えられる。
今後の展開について3研究機関は、「今回の研究成果を発展させることにより、ダイヤモンド中のスピンを量子メモリーとし、超伝導量子ビットを量子演算用素子としたハイブリッド型の量子プロセッサへの応用や、波長の大きく離れた光信号間で量子的な情報のやり取りの橋渡しを行う量子周波数変換素子の研究開発を進める。これらの素子は、より遠距離まで到達可能な量子ネットワーク実現の要となる素子であり、その実現に向けた研究開発に取り組む」とコメントしている。

各研究機関の役割分担
<1> ダイヤモンドNV中心の生成・光学測定:大阪大学・NTT
<2> ダイヤモンドと超伝導量子ビットを組み合わせたハイブリッド系の量子状態制御:NTT
<3> 実験結果に対する理論解析:NII・NTT

(詳細は、10月13日号 Nature, “Coherent coupling of a superconducting flux-qubit to an electron spin ensemble in diamond”)

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