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富士通研、テラヘルツ波の透過による物質検査手法を25倍に高速化

September 13, 2011, 東京--富士通研究所は、光と電波の中間であるテラヘルツ(THz)波を用いた透過による非破壊の物質検査を行う手法について、従来よりも25倍高速に検査が可能な技術を開発した。
テラヘルツ波は、紙やプラスティックや布といった金属以外をよく透過し、対象の物質を正確に把握することが可能なため、隠された物質の非破壊検査などモノの内部を見える化する用途で期待されている。しかし、従来の検査手法では、1回の照射で物質の1方向のみしか測定できず、物質の全体像を測定するには対象の物質を少しずつ移動させて何度も照射する必要があるため、検査に時間がかかるという課題があった。
今回、新たな光学素子の開発により対象の物質移動を不要にすることで、縦横30mmの対象物の測定時間を従来の34分から1分21秒へと25倍に高速化した。これにより、手紙の中の薬物検査や空港でのセキュリティ検査の時間短縮、さらにはデバイスの品質検査への応用が期待される。
テラヘルツ波は、光と電波の中間の波長(0.3mm)と性質を持っており、紙やプラスティックや布といった金属以外をよく通す。X線と可視光では見えるものが違うのと同じように、テラヘルツ波を使うとこれまでとは異なったものが見えてくる。テラヘルツ波は、その物質特有の指紋スペクトルが測定できるため、たとえば同じように見える錠剤においても、それが何の薬であるかが判明できる。また、X線と比べて人体に安全であるという特長があるため、セキュリティ検査や医療目的などにも効果的。これまで見えなかったものが見える性質を活かして、封筒の中身の検査や税関での荷物の非開封検査、食品中への混入物の検査、損傷や劣化などを調べるデバイスの品質検査など、モノの内部を見える化する用途に幅広く応用できることが期待されている。
テラヘルツ波は目で見ることができず、また、カメラでも撮影することができない。そのため、電気光学結晶を用いて、テラヘルツ波の強度の変化が、カメラで見ることができるプローブ光の強度変化に転写される方式を利用する。この結晶を用いた検査方法として、テラヘルツ波を透過させたい物質にあてると同時に、プローブ光を斜めからあてることで、透過してきたテラヘルツ波とプローブ光に生じる時間差を利用し、対象の物質の透過した時間波形を瞬時に得る方式が使われている。
しかし、この方法では1度の照射で物質の1方向についての情報しか得られず、物質の全体を1度に測定することはできない。物質全体を把握するためには、物質を少しずつずらしながらそのつど照射して測定する必要があるため、検査に時間がかかるという課題があった。
今回、物質を移動しない測定を可能にするために、テラヘルツ波と斜め入射によるプローブ光を用いた検出法において、プローブ光の途中に、新たに開発した多数の段差を用いた階段状ミラーアレイを配置した。これにより、物質に対して複数回の移動をしたのと同等の効果を得ることができ、1回の照射で検査が可能になる。
今回作製した階段状ミラーアレイを用いたテラヘルツ波による測定時間を調査し、縦横30mmの対象物の測定時間が従来の34分から1分21秒へ25倍高速されることを確認。これにより、手紙の中の薬物検査や空港でのセキュリティ検査の時間短縮、さらにはデバイスの品質検査などへの応用が期待される。
富士通研は、今後検査のさらなる高速化をおこない、2014年頃の実用化を目指している。

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