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ナノスケールで細部を見る新しいX線顕微鏡

August 16, 2011, San Diego--UCサンディエゴの物理学者たちが1nmサイズまで詳細に見ることができる新しいX線顕微鏡を開発した。
この新しいナノスケール顕微鏡はレンズで画像を生成するのではなく、強力なコンピュータプログラムを利用する。このコンピュータプログラム、つまりアルゴリズムはナノ構造から跳ね返ってくるX線によって生ずる回折パタンを解読可能な画像に変換することができる。UCサンディエゴのOleg Shpyrko助教授によると、この顕微鏡によって初めて磁区をナノメートル精度で画像化することができた。レンズを使うことなく、ナノスケールレベルで磁気構造を見ることができる。
このレンズレスX線顕微鏡のアプリケーションの1つは、コンピュータ向けの小型データストレージ機器のメモリ容量拡大のための開発が挙げられている。
UCサンディエゴの磁気記録研究センタディレクタ、論文の共同執筆者、Eric Fullerton氏は、「ハードディスク面の磁気データビットは現在15nmであるが、その研究にこの顕微鏡は役立つ。直接ビットを画像化することができるので、将来、もっと多くのデータを記録できるようにする開発に役に立つだろう」と見ている。
X線顕微鏡のレンズの役割をするアルゴリズムを開発したのはShpyrko研究室の大学院生、Ashish Tripathi氏。アルゴリズムは、原理的に、ハブル宇宙望遠鏡のぼやけた画像を鮮明にするコンピュータプログラムのように機能する。これは望遠鏡が宇宙で修正される前、望遠鏡ミラーの球面収差によって起こる現象。同様のコンセプトは、アダプティブオプティクスを使用する地上の望遠鏡で作業をする天文学者も利用している。アダプティブオプティクスとは、コンピュータ制御の可動ミラーで、大気を透過する星の光のまたたきによって生ずる画像の歪を取り除く技術。
Tripathi氏が開発した技術は全く新しいものだ、と言う。「開発には膨大な量のシミュレーションが必要だった」とShpyrko氏はコメントしている。
顕微鏡のナノスケール分解能をテストするために研究者たちは、ガドリニウムと鉄で構成される層フィルムを作製した。そのようなフィルムは、現在情報技術業界で容量が大きく、高速なコンピュータメモリやディスクドライブを開発するために研究されている。
両方とも磁性材料であり、それを組み合わせると、自然発生的にナノスケールの磁区が形成される、実際に「自己組織化して磁気ストライプを形成する」とShpyrko氏は言う。
X線顕微鏡下では、層ガドリニウムと鉄のフィルムは、バークラバ砂漠のようで、磁気的に波打って一連の磁区を形成しており、反復する指紋の尾根の渦のように見える。このような磁区を初めてナノスケールで読み取れたことは、益々小さくなるハードディスクに、より多くのデータを詰め込もうとしているコンピュータエンジニアにとって極めて重要である。
材料の磁区が小さくなればなるほど、パタンが薄くなればなるほど、1つの材料の小さな空間に蓄積できるデータ量が増える。「できることは、磁気ビットのサイズを縮小することだ」(Shpyrko氏)。
また、X線のエネルギーをチューニングすることで、材料内の他の成分を見る技術にも使うことができる。生物学では、可視光の分解能よりも優れた空間分解能でウイルス、細胞、様々な組織を画像化するために用いることができる、とShpyrko氏は主張している。
(詳細は、オンライン版Proceedings of the National Academy of Sciences)

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