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極低温の原子気体を用いて物質の新しい量子状態を作り出すことに成功
August 4, 2011, 京都--京都大学と日本電信電話株式会社(NTT)は、レーザ光を用いて作成した人工の結晶の中に極低温の原子気体をとどめることで、これまで存在していなかった物質の新しい量子状態を作り出すことに世界で初めて成功した。
研究成果は、極低温にまで冷却された原子の状態を非常に高い精度で制御、観測することを可能とするだけでなく、物質の性質を決める原理の解明に向けた量子シミュレータの実現に大きな役割を担うことが期待される。
近年、光格子と呼ばれる人工の結晶をレーザ光で作る技術が確立し、物質が低温で示す特異な性質を極低温の原子気体を使って調べようとする研究が注目を集めている。京都大学とNTTでは、それぞれの強みを生かし、共同で極低温原子気体の研究を行ってきた。
京都大学では、観測するのに適したイッテルビウム(Yb)原子を極低温にまで冷却できる優れた実験技術をもち、NTTでは、数万個にも及ぶ原子が光格子の中で複雑に運動する様子を効率よく解析できる独自の優れた数値計算技術をもっている。光格子中のイッテルビウム原子の状態を超高精度に制御・観測する実験を京都大学が実施し、その京都大学の実験に対する精密な理論計算をNTTが行うことで、世界に先駆けた研究が実現した。
今回、イッテルビウム原子に含まれる異なる同位体を極低温にまで冷却して光格子の中にとどめ、通常の物質系では存在しなかった新しい量子状態を作り出すことに世界で初めて成功した。量子力学ではすべての粒子はボース粒子(ボソン)とフェルミ粒子(フェルミオン)と呼ばれる性質が異なる2種類の粒子に区別される。今回、イッテルビウム原子の豊富な同位体を利用して、ボソンとフェルミオンを光格子の中で混合させた。その結果、ボソンとフェルミオン間に働く相互作用および混合させる数に応じて、多様な量子状態が実現することを明らかにした。特に、ボソンとフェルミオンが格子点上に1個ずつランダムに入り混じった混合モット絶縁体や、複数のボソンとフェルミオンが合わさって一つの粒子のようになった複合粒子状態は今回の研究で確認された新しい量子状態。
今回見出された極低温原子気体の新しい量子状態は、温度をさらに下げることで多様性に富んだ秩序状態に移り変わっていくと考えられている。この秩序状態がどのようなメカニズムで出現するのかを解明することは、物質系の秩序状態である磁性や超伝導などの研究に大きな進展をもたらすことが予想される。研究チームは今後の研究について、「原子気体を冷却する技術をさらに発展させ、物質の性質を決める原理の解明に向けた量子シミュレータの実現を目指している。さらに将来的には光格子を量子コンピュータへの応用を可能とするため、原子の制御・観測方法の開拓を目指す」としている。
研究成果は、英国科学雑誌Nature Physics(8月1日)に掲載された。
研究成果は、極低温にまで冷却された原子の状態を非常に高い精度で制御、観測することを可能とするだけでなく、物質の性質を決める原理の解明に向けた量子シミュレータの実現に大きな役割を担うことが期待される。
近年、光格子と呼ばれる人工の結晶をレーザ光で作る技術が確立し、物質が低温で示す特異な性質を極低温の原子気体を使って調べようとする研究が注目を集めている。京都大学とNTTでは、それぞれの強みを生かし、共同で極低温原子気体の研究を行ってきた。
京都大学では、観測するのに適したイッテルビウム(Yb)原子を極低温にまで冷却できる優れた実験技術をもち、NTTでは、数万個にも及ぶ原子が光格子の中で複雑に運動する様子を効率よく解析できる独自の優れた数値計算技術をもっている。光格子中のイッテルビウム原子の状態を超高精度に制御・観測する実験を京都大学が実施し、その京都大学の実験に対する精密な理論計算をNTTが行うことで、世界に先駆けた研究が実現した。
今回、イッテルビウム原子に含まれる異なる同位体を極低温にまで冷却して光格子の中にとどめ、通常の物質系では存在しなかった新しい量子状態を作り出すことに世界で初めて成功した。量子力学ではすべての粒子はボース粒子(ボソン)とフェルミ粒子(フェルミオン)と呼ばれる性質が異なる2種類の粒子に区別される。今回、イッテルビウム原子の豊富な同位体を利用して、ボソンとフェルミオンを光格子の中で混合させた。その結果、ボソンとフェルミオン間に働く相互作用および混合させる数に応じて、多様な量子状態が実現することを明らかにした。特に、ボソンとフェルミオンが格子点上に1個ずつランダムに入り混じった混合モット絶縁体や、複数のボソンとフェルミオンが合わさって一つの粒子のようになった複合粒子状態は今回の研究で確認された新しい量子状態。
今回見出された極低温原子気体の新しい量子状態は、温度をさらに下げることで多様性に富んだ秩序状態に移り変わっていくと考えられている。この秩序状態がどのようなメカニズムで出現するのかを解明することは、物質系の秩序状態である磁性や超伝導などの研究に大きな進展をもたらすことが予想される。研究チームは今後の研究について、「原子気体を冷却する技術をさらに発展させ、物質の性質を決める原理の解明に向けた量子シミュレータの実現を目指している。さらに将来的には光格子を量子コンピュータへの応用を可能とするため、原子の制御・観測方法の開拓を目指す」としている。
研究成果は、英国科学雑誌Nature Physics(8月1日)に掲載された。