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大阪大学とJ-PARCセンター、世界最高性能の中性子集光技術を確立

July 27, 2011, 大阪--大阪大学大学院工学研究科、山村和也准教授と日本原子力研究開発機構J-PARCセンター曽山和彦セクションリーダーらの開発チームは、中性子ビームを極めて高効率で集光させることができる楕円面スーパーミラーの開発に成功した。この楕円面スーパーミラーを用いると、単位面積あたりの中性子ビームの照射強度が、ミラーを使用しない時と比較して50倍以上に増加する。
中性子は陽子とともに原子核を構成する中性の粒子で、磁気を持っている。中性子が束状になって進むと中性子ビームとなる。中性子ビームを用いると、X線では調べることが困難な水素などの軽い元素や磁気を持つ物質を調べることができる。2008年に建設された大強度陽子加速器施設(J-PARC)では、強い中性子ビームを発生させることができるが、物質の表面界面や極限環境下の構造を詳細に観測するには、さらに強いビームが必要。そのためには、中性子ビームを絞る高性能な集光技術の確立が不可欠。
今回、ナノメートル(nm)精度で加工された石英基板上にニッケル炭素とチタンの多層膜を安定に形成することで、世界最高性能の中性子集光技術の開発に成功した。この集光技術を用いると中性子ビームを効率的に集光でき、ハードディスクなど記憶媒体上の磁気構造をナノメートルレベルの分解能で解析することが可能になる。これは、次世代の高密度記録媒体を開発するための基盤技術。また中性子ビームの強度が高くなると、高温・高圧下の微粒子内部に含まれる水の原子配列などを精密に調べることも可能になり、地球・惑星深部の構造に迫る研究などにも有用であると期待される。
今回開発した技術では、集光に必要な形状の基板をあらかじめ作製し、その上にスーパーミラーを形成する。こうして得られた新しい集光ミラーの角度と位置を中性子ビームの進行方向に対して簡単に調整するだけで、従来行われてきた集光法に比べて、より効率的に中性子強度を増加することができる。
今回開発したミラーの作製では、長さ400mmの石英基板を数値制御ローカルウエットエッチングと精密研磨技術で加工し、形状誤差が0.5µm以下、表面の粗さ0.2nm以下の高精度な楕円面基板を作製。こうして得られた石英基板の上にイオンビームスパッタ法で1200層からなるニッケル炭素とチタン(NiC/Ti)の多層膜を形成すると、スーパーミラーが完成。こうして得られたスーパーミラーの角度と位置を、中性子ビームの進行方向に対して簡単に調整するだけで、微小集光された大強度の中性子ビームを得ることができる。
実際に作製したミラーの集光性能をJ-PARCビームライン(NOBORU)を用いた評価について研究チームは、「幅0.1mmの光源スリットから拡がりながら出る中性子ビームを等倍で集光するミラーを用いて反射させ、最も収束する位置のビーム幅を測定した結果、光源スリットの幅とほぼ同じ半値幅0.128mmを得た。また、今回開発した集光ミラーを用いると、集光ミラーを使用しない場合と比較して52倍ものビーム強度を達成した。今回開発した集光ミラーは、世界最高の集光性能を誇り、従来の集光ミラーを用いた時と比較しても、中性子ビーム強度を一桁以上向上させることができる」と説明している。
この研究は、JST 研究成果展開事業【先端計測分析技術・機器開発プログラム】要素技術タイプの一環。
開発成果の詳細は、チェコ・プラハで開催された中性子散乱に関する国際学会「ECNS2011」で2011年7月22日(チェコ時間)に口頭発表された。
(詳細は、www.jst.go.jp)

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