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単方向性の強い“whispering gallery”マイクロレーザを実証
December 16, 2010, Cambridge--1世紀前にロンドンのセントポール教会で発見された現象を利用して、ハーバード大学の応用科学者たちが初めて単方向性の強いコリメートマイクロレーザを実証した。
この成果は、浜松ホトニクス、ドイツのMagdeburg大学理論物理学研究所との共同によるもので、センシングや通信などのフォトニクス分野で新しいアプリケーションが幅広く期待できる。
約1世紀前、英国の科学者Lord Rayleighは、セントポール教会ドームの両端に対向して立っている二人の人間が丸い壁に囁きかける(whispering)ことで相互に聞き取れる仕組みについて考えていた。Rayleighは、音が壁の滑らかな表面に沿って進み、散乱や吸収による減衰がほとんど無視できることを発見した。
光の場合は、周回する光が境界からの多重反射によって小さな円形ディスクの周辺に貼り付けられていることになる。滑らかなディスク内では減衰は極めて少ないので、世界で最もしきい値の低いレーザの中にはすでにこのような共振器を使用しているものもある。しかし、円形ディスクには課題もある。
「このようなマイクロレーザを実用化するための未解決の課題の1つは、出力光に方向性がなく、出力パワーがほとんど得られないことだ」とFederico Capassoチームリーダ、Robert L. Wallace応用物理学教授は言う(Vinton Hayes Senior Research Fellow in Electrical Engineering at Harvard’s School of Engineering and Applied Sciences)。
「光はこのフイスパリング・ギャラリモード(whispering gallery modes)に捉えられていて、わずかな等方出力以外では、逃れることができない。この問題を解決するためにディスクの形状を適切に変えるというやり方からは、よい結果が得られなかった」。
マイクロレーザを楕円にして波長サイズのノッチをエッジから刻むことで、Capassoチームはこの周回するギャラリーモードがノッチから効率よく散乱し、マイクロレーザからほぼ平行光が出現することを見いだした。
プロトタイプは、波長10μm、光出力5mWの量子カスケードレーザ(QCL)。マイクロレーザのパフォーマンスはノッチの細部に影響されず、このデバイス設計は極めてしっかりしたものとなっている。
「われわれの計算によると、ノッチを入れた楕円マイクロレーザは1μm付近の短波長でパフォーマンスがはるかによくなる。この波長帯は光通信で一般に用いる波長であり、フイスパリング・ギャラリモードの減衰はほとんど無視できる」とMagdeburg大学理論物理学研究所のJan Wiersig氏は説明している。
「標準的なウエハベースの製法を用い、このシンプルな構造でロバストなマイクロレーザの実現に成功したことは、多くの重要なアプリケーションに向けて方向性の強い光源の少量生産が可能になることを示している。例えば、高密度のチップスケール集積のPIC、光通信、医療/バイオセンサ、lab-on-a-chipなどの応用が考えられる」と浜松ホトニクス中央研究所リサーチフェロー、Masamichi Yamanishi氏はコメントしている。
(詳細は、Proceedings of the National Academy of Sciences)
この成果は、浜松ホトニクス、ドイツのMagdeburg大学理論物理学研究所との共同によるもので、センシングや通信などのフォトニクス分野で新しいアプリケーションが幅広く期待できる。
約1世紀前、英国の科学者Lord Rayleighは、セントポール教会ドームの両端に対向して立っている二人の人間が丸い壁に囁きかける(whispering)ことで相互に聞き取れる仕組みについて考えていた。Rayleighは、音が壁の滑らかな表面に沿って進み、散乱や吸収による減衰がほとんど無視できることを発見した。
光の場合は、周回する光が境界からの多重反射によって小さな円形ディスクの周辺に貼り付けられていることになる。滑らかなディスク内では減衰は極めて少ないので、世界で最もしきい値の低いレーザの中にはすでにこのような共振器を使用しているものもある。しかし、円形ディスクには課題もある。
「このようなマイクロレーザを実用化するための未解決の課題の1つは、出力光に方向性がなく、出力パワーがほとんど得られないことだ」とFederico Capassoチームリーダ、Robert L. Wallace応用物理学教授は言う(Vinton Hayes Senior Research Fellow in Electrical Engineering at Harvard’s School of Engineering and Applied Sciences)。
「光はこのフイスパリング・ギャラリモード(whispering gallery modes)に捉えられていて、わずかな等方出力以外では、逃れることができない。この問題を解決するためにディスクの形状を適切に変えるというやり方からは、よい結果が得られなかった」。
マイクロレーザを楕円にして波長サイズのノッチをエッジから刻むことで、Capassoチームはこの周回するギャラリーモードがノッチから効率よく散乱し、マイクロレーザからほぼ平行光が出現することを見いだした。
プロトタイプは、波長10μm、光出力5mWの量子カスケードレーザ(QCL)。マイクロレーザのパフォーマンスはノッチの細部に影響されず、このデバイス設計は極めてしっかりしたものとなっている。
「われわれの計算によると、ノッチを入れた楕円マイクロレーザは1μm付近の短波長でパフォーマンスがはるかによくなる。この波長帯は光通信で一般に用いる波長であり、フイスパリング・ギャラリモードの減衰はほとんど無視できる」とMagdeburg大学理論物理学研究所のJan Wiersig氏は説明している。
「標準的なウエハベースの製法を用い、このシンプルな構造でロバストなマイクロレーザの実現に成功したことは、多くの重要なアプリケーションに向けて方向性の強い光源の少量生産が可能になることを示している。例えば、高密度のチップスケール集積のPIC、光通信、医療/バイオセンサ、lab-on-a-chipなどの応用が考えられる」と浜松ホトニクス中央研究所リサーチフェロー、Masamichi Yamanishi氏はコメントしている。
(詳細は、Proceedings of the National Academy of Sciences)