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理研、光化学反応の超高速初期過程をFELでリアルタイム追跡

April 5, 2010, 播磨--理化学研究所(理研)と高輝度光科学研究センター(JASRI)は、自由電子レーザ(FEL)とフェムト秒(fs)レーザを同期させ、有機分子の光化学反応の初期過程をリアルタイムで追跡することに成功した。
 これは、理研基幹研究所鈴木化学反応研究室の廖雪兒(リュウ・シイ)アジアプログラムアソシエート、小城吉寛協力研究員、鈴木俊法主任研究員、理研とJASRIが組織するX線自由電子レーザ計画合同推進本部の研究グループの研究成果。
 研究グループは、XFELの小型プロトタイプ(SCSS試験加速器)、真空紫外領域のFELと、紫外線領域のフェムト秒レーザを同期させ、時間分解光電子イメージングという手法で、ピコ秒(ps)オーダーで起こる有機分子の光化学反応の初期過程を追跡観測することに初めて成功した。観測実験は、理研基幹研究所のグループが開発した光電子イメージング装置を、SCSSのビームラインに接続して行った。芳香族の化学物質「ピラジン」に、まず紫外フェムト秒レーザを吸収させた後に、遅延時間を設けてFELを照射し、分子から電子を放出させた。この放出電子の分布を測定することで、内部転換や項間交差と呼ばれる光化学反応の超高速初期過程を起こす様子を、明瞭に観察した。
 今回の実験は、理研が建設したFELを使った初めてのレーザ同期実験であり、波長可変紫外フェムト秒レーザと真空紫外FELによる光化学反応研究では、世界初の例。
 研究グループは、SCSSの真空紫外FELビームラインに、基幹研究所から移設した光電子イメージング装置を接続。ビームラインと装置の中は真空。この装置内にピラジン(C4H4N2)という、平面型の芳香族有機分子の蒸気を直径数mmの分子ビームとして導入。この分子ビームに「第1の光パルス」として紫外フェムト秒レーザ(324nm)を照射し、ピラジンを第1電子励起状態(S1状態)に励起した。
 324nmの紫外フェムト秒レーザ照射の瞬間(ピラジンが光化学反応を開始した瞬間)から、それぞれ8、58、408ps後にFELを照射し、光電子を観測。反応開始直後(8ps後)には、分子がS1状態であることを示すリングが明瞭に見えたが、時間の経過ともに薄くなり、408ps後には消失。この結果は、項間交差で電子状態がS1からT1へ変化していく様子が、ピコ秒オーダーのコマ送りで追跡観測できたことを表している。
 研究グループは、「第1の光パルス」の波長を260nmに変更した実験も行った。同じ分子であっても、吸収した紫外光の波長によって、その後に起こる過程は多様。この波長では、多段階の複雑な電子状態変化が起こるが、324nmの実験と同様に追跡観測に成功。反応開始直後の光電子イメージを解析して得たスペクトルは、反応途上の分子がどのような電子状態でどれだけ振動しているか、という情報まで含んでいる。過去の実験では「第2の光パルス」に波長198nmの紫外フェムト秒レーザを採用したが、観察しているスペクトルが途切れていた。これは反応途上の分子すべてをイオン化するには、光のエネルギーが不十分だったことが原因。このため、「第2の光パルス」を、より波長が短い161nmのFELに変えたことで、スペクトル全体を測定することができた。
(詳細は、www.riken.go.jp)

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