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鍵を盗まれても解読されない暗号の実在を証明
December 14, 2009, 東京--玉川大学学術研究所の広田修教授は、光通信量子暗号(Y-00 プロトコル)が通信後に鍵が盗まれても、解読されない暗号になり得るという一般的な証明に成功した。
これによって、これまで究極の暗号と考えられていたOne time pad(鍵使い捨て暗号)を超える暗号の実在が明らかになった。近未来型クラウドシステムは、全ての重要なデータがデータセンタとの間で通信によってやり取りされるため、その実現の要は通信回線の極めて高い安全性の確保にあるといわれている。その対応技術として、光の通信方式によって暗号化する光通信量子暗号(Y-00 プロトコル)が注目され、ユーザが求める安全性のニーズに合わせたY-00 装置の開発競争が日米で熾烈になっている。これまで、玉川大学と日立情報通信エンジニアリング株式会社は10Gbit/sec の光強度変調-直接検波方式のY-00 送受信装置を開発し、360km の伝送実験に成功している。 また米国では、NuCrypt 社製の2.5 Gbit/sec 光位相変調方式Y-00 による500km の商用回線伝送実験の成功が報告されている。最近、この暗号の究極的な能力がどのようなものかが活発に議論されている。
現代暗号学の最重要課題の一つは、暗号学におけるShannon 限界を破る暗号の存在を実証することであるとされている。その実在の例を示すため、Gauss の私的ランダム化を量子雑音によって実装する光通信量子
暗号(Y-00)が提案された。Y-00 を実現する方法は、正規受信者が量子最適受信器を採用するものと、通常の光受信器を採用する2つのモデルがある。前者は基本プロトコルのみでShannon 限界を破るが、後者は新たなランダム化が必要である。いずれにしてもこの暗号は、共通鍵を疑似乱数生成器によって伸長した系列で、正規受信者と盗聴者の信号検出能力に差をつけることによって、数百ビットの短い共通鍵暗号でありながら解読不可能性を達成する。
今回、量子Shannon 通信路符号化理論のHolevo・相馬・広田の定理を用いて、Shannon 限界超越の一般的な証明に成功した。この結果は、通信後に盗聴者が鍵を入手しても、その鍵で蓄積データを解読することができないことを保証する(1)。
参考文献
(1) 広田修 他、“光通信量子暗号Y-00 によるShannon 限界超越とHolevo・相馬・広田の定理”(電子情報通信学会、情報セキュリテイ研究会)