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NIMS、環境に優しい高性能非鉛圧電材料を発見
December 11, 2009, つくば--物質・材料研究機構(NIMS)センサ材料センターの任暁兵グループリーダーらは、世界初となる環境に優しく、かつ高性能の非鉛圧電材料の開発に成功した。
この材料は、50年間広く使用されてきた鉛圧電材料PZTの圧電特性を初めて超えた。それと同時に、高性能の非鉛圧電材料の理論も提唱し、更に良い非鉛圧電材料の発見に繋がる可能性も秘めている。この一連の成果で、「有害な鉛は高い圧電特性に必須」という神話を破ることとなり、世界規模で鉛圧電材料の代替に拍車をかける可能性が期待される。
圧電材料は電圧を加えると伸縮し、逆に力を加えると電圧が発生するエネルギー変換機能を持っているため、様々なセンサやアクチュエーターに応用される重要な物質群。これらの材料の王者は50年間に亘り使用され続けてきた鉛系圧電材料—PZT。PZTは、携帯電話、パソコン、テレビ、自動車など数多くの家電製品・汎用工業製品から原子間力顕微鏡やロボットなどのハイテク製品まで、広く使用されているが、鉛圧電材料は有毒な鉛を大量に含むため、環境問題や人体への影響が強く懸念され、厳しく規制されつつある。そのため、非鉛圧電材料の開発は世界的に喫緊の課題となっている。しかし、これまで多くの研究努力にもかかわらず、非鉛圧電材料の圧電特性は鉛圧電材料に及ばず、高性能を持つソフトPZT2)に程遠い状況であった(半分程度まで)。この状況で産業界が待望している鉛圧電材料の代替となる材料は長い間実現されず、「有害な鉛は高い圧電特性に必須」という悲観的な神話が広がっている。
任氏の研究グループは、新しい非鉛圧電材料BZT-BCT(チタン酸ジルコ酸バリウムカルシウム)を開発し、高性能のソフトPZTを超える圧電特性(圧電定数d33=620pC/N3))を世界で初めて実現した。更に、この非鉛圧電材料の高い圧電特性の起源を明らかにすることにより、高性能の圧電材料の理論を提唱。この理論は更に良い非鉛圧電材料の創製に指針を与えることとなり、今後多くの高性能非鉛圧電材料の発見に繋がる可能性を秘めている。
今回の研究成果によって、「有害な鉛は高い圧電特性に必須」という神話を破ることとなり、環境性と高性能が両立できる非鉛圧電材料は可能であることを示すと共に、新しい理論で、更に良い特性を持つ非鉛圧電材料を発見する可能性を秘めている。これらの高性能非鉛圧電材料は世界的規模で鉛圧電材料の代替に向けて拍車をかける可能性がある。