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ドレスト光子を用いて赤外光照射による可視発光を実現
April 7, 2009, 東京--東京大学と浜松ホトニクスは、ドレスト光子による非断熱遷移過程を介した可視発光過程並びにそれを応用した超高速光サンプリングシステムの実験に成功した。
励起子やフォノンなどの物質中の素励起と電磁場が結合したドレスト光子は、光の波長の数分の1以下の微小構造に局在していることに加え、分子振動準位など従来の光学的禁制遷移を励起可能という通常の光子と異なる特徴を有する。東京大学と浜松ホトニクスは、この原理を色素分子のナノ寸法結晶に適応し、エネルギーの低い赤外光照射による可視発光現象を実現し、その応用システムを示した。
この発光現象は、ドレスト光子による非断熱遷移過程を多段階に経たあとの色素結晶からの発光過程であり、DCMやクマリンなどの一般的色素でも発現することが確認された。赤外光強度に対する可視発光強度はドレスト光子モデルで説明され、赤外から可視光への変換効率は非線形結晶をはるかに上回るという。また、多段階遷移の中間状態の寿命測定や2つのインコヒーレント光による可視光変換なども実験的に確認され、従来の2光子過程とは異なることが示された。
応用例として、短波長変換機構としての利用に加えて、本現象の高速性に基づいた光サンプリングシステムが示され、短光パルス列のストリーク測定がデモンストレーションされた。極めて簡易なシステム構成、ナノ材料(色素)を変えることによる広帯域対応などの利点を有する。
東京大学と浜松ホトニクスは、ドレスト光子による非断熱遷移過程の研究とシステム提案をさらに進めるとしている。
この成果は2008年3月の応用物理学関係連合講演会で発表された。