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NICT、テラヘルツ技術で初期ルネッサンス絵画の技法を解明

February 26, 2009, 東京--独立行政法人情報通信研究機構(NICT)は、テラヘルツイメージング法によりウフィツィ美術館所蔵のジョットによる初期ルネッサンスの名画「バディア家の祭壇画」をテラヘルツ波で分析した。
その結果、その技法は石膏2層からなる中世の技法であることを発見し、X線等の既存の透過撮影では不可能だった下地を含む絵画の三次元の内部構造を、非破壊、非接触で観察することができた。
 今回、石膏2層からなる中世の技法を発見したことは、美術史上においても、この作品が絵画というジャンルの成立、ルネッサンス時代の夜明けを告げる作品であることを示す貴重な発見であるとともに、修復担当者に有益な情報であり、テラヘルツ波技術が実際の文化財分析に有効であることを世界で初めて実証した。
 テラヘルツ波は、光と電波の中間の周波数帯域に位置する電磁波で、計測や通信等における新たな利用技術の研究が進められている。テラヘルツ波を用いた分光イメージングは、完全に非破壊で、不透明な物質でも透過する特性を活かして、内部構造の観察に利用できる。従来から文化財分析に用いられているX線の透過撮影等の既存技術では、金属以外の物質からなる作品の3次元の内部構造を、非破壊、非接触で観察することは不可能。名画と呼ばれる作品は、過去に数回以上、修復の歴史があるので、最表面の彩色部分だけでなく、下地も含めて、その損傷状態などを知ることが望まれていた。 
 今回、NICTではイタリア、フィレンツェのUffizi美術館の所蔵品であるGiottoの代表作のひとつ、Polittico di Badia(バディア家の祭壇画、1300年代初頭)が修復される機会を利用し、テラヘルツによる分析を行った。下地の構造からGiottoは中世の技法、つまり絵が祭壇の装飾という扱いだった時代の技法を用いながら、表現としてはルネッサンスの特徴である自然で人間的な作品を描いたということが分かった。これらの結果により、美術史において、この作品がルネッサンスの夜明けを示すマイルストーン的な作品であることを実証した他、修復士の待ち望んでいた作品の3次元情報を提供することができた。
 バディア家の祭壇画の修復終了後、3月6日よりRomaで開催される展覧会“Giotto e il Trecento(ジョットと1300年代)”において研究紹介される他、既存の手法(一部のサンプリングによる観察、近赤外分光法等)を用いた分析を行い、作品の修復記録として出版する予定。

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