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NEC、3層構造ナノフィラーを開発
February 19, 2009, 東京--NECは、3層構造のナノサイズの粒子状充填材(ナノフィラー)を開発した。開発の狙いは、バイオプラスチック製の電子機器筐体の薄型化や耐久性向上のため、現在のバイオプラスチックの中核であるポリ乳酸樹脂を大幅に強靭化することにある。
今回開発したナノフィラーは、従来のフィラーや他の添加剤では困難であった、ポリ乳酸樹脂の強度を保持しながら、破断までの伸び特性を2倍以上に向上することを初めて実現した。
主な技術的特長。
1. 従来のような微粒子を複雑に表面処理する工程を設けず、特殊な有機ケイ素化合物の凝集と分子間の反応による架橋化によって、これまでにない3層構造のナノフィラーを形成。
2. 同ナノフィラーは、高弾性の酸化ケイ素系のコア、応力緩和に有効なシリコーンゴムの中間層、および、ポリ乳酸等との親和性の高い、表面の樹脂層の3層からなり、ポリ乳酸へ少量(重量の5%)添加するだけで、強靭性の大幅な向上が可能(最大強度は元のポリ乳酸以上、破断伸びを2倍以上向上)。
近年、プラスチックにナノサイズの粘土鉱物や酸化ケイ素などの無機物のナノフィラーを含有させた、いわゆるナノコンポジットの研究開発が、プラスチックの強度アップなどの目的のため盛んに行われている。ナノコンポジットは、通常サイズ(数10μm)のフィラーに比べ、少量の添加での補強効果が報告されているが、その効果はまだ限定的で十分ではない。特に、筐体の落下耐久性などに直結する破断までの材料の伸び特性の改善は、大きな課題となっていた。これに対して、プラスチックとナノフィラーとの界面の親和性とともに応力緩和性を向上すれば、このような補強効果を大幅に向上できる可能性があるが、ナノフィラー表面にこれらの機能性を持たせた例はない。さらに、実際に実施しようとしても、何種類もの表面処理剤を段階的に塗布するような複雑な表面処理工程を要するため、実用化も困難だった。
今回NECが開発した新しいナノフィラーは、こうした課題を克服するもので、同社は「外装用のバイオプラスチックの強靭化を実現し、バイオプラスチックを使った電子機器筐体の薄型化や落下耐久性の向上などに大きく寄与する。さらに、このフィラー表面の樹脂層の構造を最適化すれば、他の様々なプラスチックにも利用できる可能性がある」と説明している。