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NICT、走査型プローブ顕微鏡の探針先端を3D位置決めシステムを開発
February 18, 2009, 東京--情報通信研究機構(NICT)は、走査型プローブ顕微鏡の操作性と汎用性を著しく向上させる手法として、プローブ顕微鏡に光学顕微鏡を組み込み探針先端の位置を3次元(3D)的に精密に決定、これを制御する技術を確立した。
同技術により、これまでユーザーに高度な熟練を要求していた観察領域の位置決めや、その領域の目標点までの探針の誘導作業を容易にするとともに、複数の試料を自動測定することが可能となる。これは、ナノメートルスケールでのNC(数値制御)処理・加工につながる大きな技術革新。
ナノメートル精度の精密観測加工技術は高度ICT社会を支える重要な基盤技術。この基盤技術の中で、プローブ顕微鏡は観測対象の多種多様な物性を原子スケールの分解能で観察できる装置であり、原子スケールで対象物表面を物理的・化学的に加工することもできる優れた装置。しかし、探針の位置を3次元的に正確に決める方法が確立されていなかったために、その操作においては、観察すべき極小領域に探針を誘導して観測部位との相対的な位置関係を正確かつ高精度で制御するには熟練した技術と経験が要求されてきた。基板表面の形状や化学特性の評価に広く用いられているプローブ顕微鏡ですが、操作性や汎用性は必ずしも良いものではなかった。
NICTは「測定対象の巨視的概観を簡便かつ高速に測定できる」光学顕微鏡の特徴を活かしてプローブ顕微鏡の探針位置を計測出来るようにした。プローブ顕微鏡の傍らに設置した光学顕微鏡で観察領域全体を一連の“スライスイメージ”として数値化、探針の位置を含めた観察領域を詳細な仮想3次元空間内に再構成した。この仮想空間の座標に基づいて装置全体を統合的に数値制御することが出来るようになり、プローブ顕微鏡の視野を任意の極小部位に正確に誘導したり、基板面全体に及ぶような広範囲に分布する観察対象を次々に探し出して原子スケールでその形状を描き出したりすることができるようになった。
この開発は、数値制御(NC)を用いたナノスケール工作機械に繋がる成果。数値制御によるナノスケールの自動加工技術は、高度な加工処理を再現性よく実現するものであり、工作機械産業の礎として重要な位置を占めると考えられる。NICTでは、位置決めのみならず、分光・表面処理など多様な技術との複合化を今後さらに強化する予定。