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重要性を高めるチタンのレーザ焼結

チタンのレーザ焼結の主な応用には、医用および歯科用機器、航空宇宙、モータースポーツ、ファッション産業などの分野がある。

独EOS社(www.eos.com)のEOSINTM-270システムを用いたレーザ焼結は、従来の鋳造、鍛造、機械加工などの方法では困難かつ高価であったさまざまな用途のチタン製法に応用できる。EOS社のeマニュファクチャリングと呼ばれるコンセプトを利用すると、比較的小量のチタンを使用する高付加価値部品の生産も可能になる。また、レーザ焼結は中空あるいはその他の軽量構造を容易に製造できるため、さまざまな性能の改善が可能になり、航空宇宙用途など軽量化を重視するアプリケーションではチタン部品の価値が向上する。
 チタン合金は低い単位体積重量と良質な生体適合性を有しており、優れた機械特性と耐腐食性が得られる。これまでのところ、レーザ焼結チタンは主として医用および歯科用機材、航空宇宙とモータースポーツ、ファッション産業などの分野に応用されている。そこでは微粉形状のTi6A14Vチタン合金であるEOS社のTi64が最も広く使われている。いくつかの医用機器では、この粉体の超低間質性(ELI)タイプの製品が使用されており、高純度のチタン粉体も市販されている。
 本稿ではレーザ焼結チタンのいくつかの重要な応用を紹介する。
 レーザ焼結によるチタンの医用機器製造のパイオニアであるリーダーイタリア社( Leader Italia ; www.leaderitalia.it)は、TiXosと名付けた新しい歯科インプラント用のねじ製品を開発した。
このチタン材料とEOSINT M-270システムを使用して製造される特別設計の製品では独自の利点が得られる(図1)。従来、このようなねじ製品は金属塊を機械加工して製造されてきた。レーザ焼結では、金属粉体を溶かし合わせることによってねじを成形するため、材料の廃棄物が生じない。十分にに高密度な本体と多孔質形状の表面をもつハイブリッド構造を形成するためにレーザ照射がコントロールされる。この構造は表面をコーティングする必要がなく、生物活性も増強される。
 また、この方法は工具を必要としないため、同じ作業からさまざまな形状とサイズをもつねじを要求に応じて作製できる。その結果、高性能な製品を高効率かつ柔軟に、連続して製造することが可能になる。リーダーイタリア社は、レーザ焼結を使用して歯科インプラントのコンピュータ設計と製造を行い、骨構造を模倣した有効多孔質を特徴とする表面構造の形成に成功した。これは従来の表面処理法では得ることができなかった成果だ。
 英フューチャーファクトリーズ社(FutureFactories,www.futurefactories.com)は、新しいファッション製品と消費者製品の創成に対して、eマニュファクチャリングの独自の応用可能性をリードしている。同社は近年ではレーザ焼結を使用して、プラスチックのランプや椅子、金属の宝石製品を作製している。これらの製品には他の製法では不可能な人目を引く幾何学形状が付与されている。フューチャーファクトリーズ社は共通のデザインをベースにしながらもそれぞれが独自性をもつ「限定版」の商品を作り出すことによって、「汎用性と個別化の共存」を実践し、新たな市場を開拓した。この設計は非常に複雑に絡み合った自由形状から構成され、材料はチタンを使用する。従来、宝飾品加工でよく用いられてきた半田付けではこうした形状はほぼ不可能であり、チタンにも適用できない。レーザ焼結によるペンダントは非常に高密度で、研磨後は所望の審美性が付与される(図2)。
 英国の履物デザイナーのケリー・ルフト氏(www.kerrieluft.com)は、レーザ焼結などの新しい技術を採用してユニークな婦人靴を創造している。彼女は最新のコレクション「Nouveau」において、チタンのラピッド・プロトタイピングによるアールヌーヴォー様式のハイヒールを発表した。彼女は靴の上部とヒールの両方に革新的なデザインを施している。このハイヒールの針金細工構造には高強度の材料が必要になるが、それにはチタンが理想的な材料であった。彼女のレーザ焼結チタンを用いた斬新なヒールデザインによるMAコレクションの婦人靴はロンドンの店頭に陳列された(図3)。
 レーザ焼結チタンはさらに多くの分野に応用され、その技術が進歩することは間違いない。EOS 社電気光学システムズ(EOS GmbH Electro Optical Systems)に関する詳しい情報は、クラウディア・ジョーダン(claudia.jordan@eos.info)から入手できる。

図1 歯科用インプラントのねじは非常に高密度の本体と多孔質の表面形状からなるハイブリッド構造を用いて作製される。

図2 レーザ焼結により、ユニークな形状の宝飾品のデザインも可能になる。

図3 アールヌーヴォー様式の婦人靴がラピッド・プロトタイピングにより創造された。

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