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スリム化で大きな利益を得る

ジェフ・ハーン

米国中西部の製造会社は、「ワンチーム、ワンゴール」の姿勢で成長を遂げている。

 GenMet 社は、フルサービスの金属製品の製造会社だ。主にトラックや建設業のOEM や店頭のPOP 産業に向けてサービスを提供している。GenMet社は1999 年にマリー・イズビスター氏とエリック・イズビスター氏に買収されたのち、継続的な装置のアップグレイドやスリム化を実践する商習慣によって、年間売上高を300億ドルから1200 億ドルに増加させた。
 両イズベスター氏は東海岸の出身だが、中西部にビジネスの機会があるとしてウィスコンシン州に移り住んでいた。移住の前、マリー氏はファイザー社(Pfizer)の組織開発部門で働いていた。また、エリック氏は、コネチカット州のジェネラル・ダイナミクス社(GeneralDynamics)で21年間原子力潜水艦の製造に携わっていた。
 かつてはジェネラル・メタル・ワークス社として知られていたGenMet社は、1871年のシカゴ大火の後、シカゴからミルウォーキーに移転した。移転後、当時のオーナーは、手当たり次第に労働者を雇い、借りられる馬小屋はすべて借り受けてシカゴ再建のために金属製品を加工した。

無駄を省く

 現在、GenMet社は廃棄物を削減し、顧客全体の価値を向上させるために製造のスリム化をはかり、米国の加工会社の中では成長株の1 社に数えられている。同社のCEO、エリック・イズビスター氏は、同社の成功はそのチームカルチャーのおかげだとしている。GenMet社の従業員は、継続してスリム化の製造方針の教育を受け、効率と生産性を最大化するために重要な役割を果たしている。
 彼は「ここにいる個々の従業員が組織に価値を与えている。ハイテク装置を購入しても、その装置を利益あるものにしようというカルチャーをもっていなければ利益を生まない」と説明する。このチームの環境は本当に最初から始まったものだ。同社は2006年にISOを取得し、プロセスの構築や継続的な改善を支援し、従業員が関与するための体制を整えている。
 イズビスター氏らは、GenMet チーム全員が同社のプロセスの文書化を約束するまでISOの認証プロセスを開始しなかった。
 エリック・イズベスター氏は「ISOの審査員は、われわれのスタッフはすべきことを正確に把握していて、審査プロセスの間も緊張していなかったと賞賛していた」と振り返る。「特定の各エリアの従業員は自分たちの手順を文書化していたため、彼らは自分たちのことが理解できていた。だから緊張しなかった。」
 GenMet 社はその後2 回再認証を受けている。このプロセスが同社の従業員研修にも組込まれている。「顧客からの外部圧力でISOを取得する企業もある。われわれはこのプロセスが全体を通じた継続的改善に貢献するからISOの認証を受けた。この認証を受けた結果として新たなより良い顧客を得ることができたとしたら、それは向上したプロセスから派生した二次的効果だ。」
 同社は、現在、ウィスコンシン・マニュファクチャラーズ・エクステンション・パートナーシップ(WMEP )の援助を受けてあらたな製造「スリム化」のための研修を行っており、各従業員がスリム化主義について教え込まれている。全社的な研修はだいたい3年ごとに行われている。また、12名はスリム化の指導者育成訓練を受けている。こうしたセッションをフォローアップするため、半日セッションが行われ、そこではそれぞれが期待されるレベルでスリム化主義について学ぶ。
 次に、同社は注文を受けることろから部品の配送まで全製造プロセスにおける「価値の流れ図」の調査を行った。このプロセスの間でみつかった価値を生まない作業を最小化するために、このプロセスに部門を越えたチームが結成された。
 研修のあとの第1週目には、従業員主導の変更が実施された。新たに結成された部署は、切断加工(レーザとタレット)部門と一緒にFIFO(古い順に取出す)レーンの開発に取組んだ。これによって、切断された部品を棚に移動する動き(価値を生まないプロセス)が廃止された。これによって行方不明になる部品もなくなった。溶接部門は、この部署と一緒に、瞬時に作業場間および同社の工場間のワークフローを安定させる「カンバン方式」と「スーパーマーケット方式」を立ち上げた。
 この研修は「5S +安全プロセス」へと引継がれ、工場内にあるすべてが仕分け(Sort)、整理(Straighten)、消毒(Scrub)、体系化(Systematize)、標準化(Standadize)といった安全(Safety)の観点で調べられた。マリー、エリックの両イズベスター氏は、全従業員が無駄を省く製造プロセスの「駆動部品」になれば、GenMet社が新たなレベルへと引き上げられると期待している。
 GenMet社は、その顧客が政府の要求を満たすようにサポートする、女性経営者の小さな企業(WOSB)だ。このWOSBを支援するため、米国防総省(DoD)は毎年上位1% を表彰し、WOSB に下請け契約の機会を与えている。
 GenMet社の社長、マリー・イズベスター氏は、ミルウォーキー市の次世代製造業評議会の委員と、WMEPの役員を務めている。2008 WisconsinManufacturing Matters Conference で、彼女は製造プロセスのスリム化について講演を行った。「ワンチーム、ワンゴール」と名づけられたワークショップでは、強力なチーム作りを進める一方、同社がいかにISO9001によって収入と能力を向上させ、全体の業務を改善したかが取り上げられた。
 「今から5年もしくは10年後に、われわれは今と同じ部品を作ってはいない」と彼女は言う。「メーカーは革新的でなくてはならない。また、価値を付加する新たな方法をみつけ、低賃金の海外企業が簡単に真似できない製品を作らなくてはならない。」

システムのアップグレイド

 両イズベスター氏がGenMet社を買収した際、三菱製のスタンドアロン型3000Wレーザも受け継いだ。彼らはすぐに、今日の世界市場で競争力を持ち続けるには持続的な強みが必要だと気づいた。彼らは、三菱レーザの商社であるアドバンスド・マニュファクチュアリング・ソリューション社(AMS)のジェフ・ランペ氏とともに、そのレーザを同社初の自動レーザ装置にアップグレイドした。新しい装置によって、GenMet社は製造プロセスを自動化し、リードタイムを半減させ、労働因子も最小限にできた。
 最近では、同社はAMSおよびMCマシナリーシステムズ社のEncore部門を窓口に、同社の既存の装置を下取りに出し、新しくより進歩したレーザ装置を購入した。新しいFlexible ManufacturingSystem は、2 台の三菱社製レーザ3015LVP/40CFX、16 段棚のタワー、自動材料搬送システムを備えている。
新装置によって、GenMet 社はより複雑で高度な加工の製品に移行することができた。
 「下取りプログラムによって、小規模の会社も、ゼロからスタートすることなく最新のレーザ装置にアップグレイドすることができる。また、過去10年にわたり、三菱から受けたサービスと研修は非常に素晴らしいものだ。AMSとNCellのチームは、新しいレーザ装置用にわれわれのスタッフに研修を行い、効率を最大化することをサポートしてくれた。社外研修も行ってくれた。われわれは無駄な労力を省くことができた。MTS、AMS、NCellによって前進を続けることができたのだ」とイズベスター氏は語る。

成長の継続

 同社の自動化の促進と無駄を省いた製造にサポートされ、GenMet 社は継続的な成長を見込んでいる。2007 年、同社はスリンジャーに溶接工場用として、二つ目となる1万6200平方フィートの施設を購入した。従業員数もその年、50名から80名になった。イズベスター氏は、同社の従業員に、自動化と新装置によって彼らの仕事が脅かされることは無く、逆に会社を成長させることができるのだと教え込んでいる。
 2008 年1 月、ウィスコンシン州の州知事であるジム・ドイル氏は、次世代製造業計画をGenMet社の工場から立ち上げることを決めた。この計画は製造の効率化とスリム化に焦点を当てている。計画の目標にはウィスコンシン州のメーカーがより無駄を省き、効率化を進めて競争力を得ることも含まれている。小中規模のメーカーを支援することにより、州全体に無駄を省いた製造を拡大し、能率的な経済発展プログラムによって次世代の製造業の税額控除を創造しようというのだ。
 州知事のドイル氏は「競争力を確保するためには、われわれの州のメーカーはよりスリム化し効率化しなくてはならない」と語っている。これを実践したことがGenMet社の成功の基盤である。

三菱のFlexible Manufacturing System によってGenMet 社はリードタイムを半減させ、より複雑で高度な加工の製品に移行できた。

GenMet 社の新しいレーザLVP による切断加工は、以前の装置の2 倍の加工速度で、よりよいエッジ状態を可能にし、バリ取りの必要を低減する。

GenMet 社の工場。

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