All about Photonics

Home > Magazine > Articles

関連イベント

関連雑誌

Articles バックナンバー記事

ファイバレーザが応用範囲を広げる

 近赤外(NIR)Nd:YAGレーザはアルミナの穴あけ加工やシリコンのソフトマーキング/ハードマーキングおよび切断に広く使用されてきた。スイスのシノヴァ社のレーザ/ウォータージェット加工は数年にわたってシリコンの切断に使用されてきた。何故、業界の多くが2倍波、3倍波もしくは4倍波だけがシリコンの切断に適していると信じているのだろうか?
 シリコンのレーザ切断には良く知られている三つの問題がある。デブリ、熱損傷、そしてスループットだ。マルチパス方式の切断技術が、半導体励起固体(DPSS)レーザを用いて開発されたが、0.2mm 厚以上では問題が生じる。この状況を改善するにはいくつかの方法があり、たとえば、活性ガスや各種ウォーターアシスト方式が使用されている。“ステルスダイシング”として知られている新しいプロセスが開発されたが、CO2レーザを用いたガラス切断やクリービングプロセスと同様、柔軟性に欠ける。
 適切な条件下では、全てのレーザ加工プロセスである程度の熱が発生する。これはフェムト秒レーザの強力な提唱者でも同意するはずだ。この基本的な前提が受け入れられるのであれば、レーザ切断加工時に熱損傷を減少させる方法は明らかだ。つまり、単位長さ当たりの入熱を軽減させることだ。
 反射率は温度が上がると急激に下がる。こうしたことと、CWファイバレーザの非常に高い輝度、小さなスポットサイズ、持続時間、パルスエネルギー制御などを組み合わせて考えると、最近、英SPIレーザ社のラボが出した結果を多少は理解することができそうだ。
 50Wのファイバレーザを使用した0.2mm厚のシリコンの切断は、より経済的な10WのDPSSレーザ3倍波を用いる場合と比較すると、初期の段階では正反対のように見えるかもしれない。しかし、ファイバレーザを使用すると、DPSSの使用が可能なマルチパス方式の切断よりも5倍早いシングルパス方式の切断が可能だ。単位長さ当たりの入熱もほとんど同じ。非常に熱せられた金属くずや溶けた物質と一緒に、切断面を通じて熱量が排出されることを考慮すると、単位長さ当たりの入熱はずっと少なくなるはずだ。現在、SPIレーザ社はこれを裏付ける結果を出している。0.2mm 厚のシリコンは、50W 空冷式ファイバレーザを用いて最高毎分6mの速度でクラックなしで切断できる。200Wレーザを使用すると、最大1.4mm厚を毎分0.7mの速度でクラックなしで切断できた。切断面の品質は、レーザ/ウォーターアシスト加工と同等だ。ファイバレーザ加工はロバストでシンプル、そして大きな動作エンベロープで高繰返しが可能。そして、半導体材料固有の多くの特性を活用できる。あらゆる表面状態を同じような速度で切断することも可能だ。また、液体や一般の光学系は使用しない。資本やランニングコストは、DPSSやウォータージェット方式の装置に比べるとわずかな比率だ。
 本件に関する問合せは、SPI レーザ社のアプリケーション・マネージャ、トニー・ホールト氏(tony.hoult@spilasers.com)まで。

0.85mm 厚のウエハは、SPI レーザ社の200W ファイバレーザを使用して毎分3m の速度で切断された。

Micro Processing一覧へ

TOPへ戻る

Copyright© 2011-2013 e.x.press Co., Ltd. All rights reserved.