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筑波大学、昆虫の円偏光と導電性高分子を組み合わせた可変円偏光反射素子を開発

February, 17, 2025, つくば--筑波大学の研究者は、円偏光を反射する昆虫(アオドウコガネ)のさやばねの表面に導電性高分子ポリアニリンをコーティングした。これにより、ポリアニリンの酸化と還元による発色の変化と、昆虫のもつ円偏光反射特性を組み合わせ、円偏光の反射強度を調整可能な高分子素子が得られた。
アオドウコガネのような一部の甲虫は左円偏光(光の伝播方向に対して左回りに振動する電磁波)を強く反射する。これは外骨格形成の際のさなぎの時に光学活性でらせん構造をもつコレステリック液晶相を形成し、らせん構造を維持した状態で硬い骨格に固化するためである。
一方、導電性高分子ポリアニリンは、円偏光は反射しないが、電気的あるいは化学的に酸化や還元を行うと発色が変わり、これに伴って光の透過度が変わる。研究では、このような、昆虫のさやばねの円偏光反射とポリアニリンの性質を組み合わせて、可変円偏光反射素子を作成した。

まず、アオドウコガネの羽の円偏光反射性を調べた。アオドウコガネの緑色反射は染料などによるものではなく、構造色(表面の微細構造での光の反射による発色)であり、これが左円偏光を強く反射することを確認した。次に、アオドウコガネの羽上にポリアニリンをコーティングし、導電性高分子とさやばねの二層構造による高分子素子を作成した。これを用いて、ポリアニリンをドーピングにより酸化状態にした場合と、アンモニアにより脱ドープを行い還元状態にした場合の円偏光反射スペクトルを測定した。その結果、酸化状態では円偏光反射がない一方で、還元状態では左円偏光を反射した。
研究成果は、昆虫のもつ優れた光特性と導電性高分子のもつ外場応答性を組み合わせた新しいバイオ/合成光機能材料として期待される。
(詳細は、Next Materials 【DOI】 10.1016/j.nxmate.2025.100516)