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量子コンピュータの大規模化を支える材料評価技術

January, 30, 2025, つくば--産業技術総合研究所(産総研)量子・AI融合技術ビジネス開発グローバル研究センター(G-QuAT) 荒川智紀主任研究員、計量標準総合センター 物理計測標準研究部門 加藤悠人主任研究員、昆盛太郎 研究グループ長は、極低温環境下における高周波基板材料の電気的特性を評価する技術を開発した。

世界中で開発が進められている量子コンピュータ、とりわけ、超伝導回路を用いた方式のものでは、極低温中の量子ビットの制御・読み出しを行うために極低温と室温の間で高周波信号を伝送する。そのため、大規模な量子コンピュータを実現するには、低温環境下で動作する高周波回路の高密度化が不可欠。このとき、高周波部品の実装に使用される基板材料などの電気的特性が、回路全体の高周波特性に大きく影響する。しかし、それらを低温環境下で評価する技術がなかった。

今回、室温付近で高精度な高周波基板材料の評価に利用される平衡型円板共振器法を応用し、4 Kから300 Kの温度範囲での電気的特性を決定づける3つの材料パラメータ(比誘電率・誘電正接・導電率)を精密に評価する技術を開発した。同技術は低温域で使用する高周波部品の集積化や高密度フラットケーブルの開発を加速させ、大規模量子コンピューターの実現に貢献する。

要点
・4 K(-269℃)から300 K(27℃)の温度範囲で高周波基板材料の評価を実現
・3つの材料パラメータ(比誘電率・誘電正接・導電率)を同時に評価可能
・低温域で使用する高周波部品の高密度化に貢献

この技術の詳細は、2025年1月15日(米国東部時間)に「Applied Physics Letters」にEditor’s Pickとして掲載された。

(詳細は、https://www.aist.go.jp)