NASA は、太陽嵐に対して地球側で準備する時間を増やし損害を減らすためのソーラーフレア早期警戒システムを開発中であると発表し、NASA ゴダード宇宙飛行センターとインペリアル・カレッジ・ロンドンの科学者チームが6月9日版のSpace Weather誌に研究実験結果を掲載した。この研究は、新警戒システムがどのようにコロナガス噴出(CME : Coronal Mass Ejection) の測定とモデル化を両方実現し、CME が地球に及ぼす影響を予測できるかを述べたものである。Jilard News によれば内容は、以下のとおり。
コロナガスの噴出は、過熱したガスの巨大な泡である。泡は、太陽の表面近くで噴出し外へ広がって、時には地球まで到達する。電磁エネルギーと粒子の波動が地球に影響を及ぼすかどうかは、CME の場所、拡散方向、磁界方位、放出のサイズと程度によって決まる。現在このような太陽事象を監視しても、最初の噴出は測定できるものの、磁気雲がどのように地球へ向かってくるかについて良いモデルはなく、噴出による地球への影響があるかどうか、どの程度の影響なのか、決定するのは難しい。今のところ科学者は衛星を使用して、地球の大気に到達するわずか30分前から1時間前の磁界の方向を検知できるだけである。これでは送電網やGPS あるいは衛星通信を使う送電網が起こりうる混乱に対して十分に準備する時間がない。この研究では、地球上にある送電網の能力を向上させて磁気雲の動きを予測し、準備するのに1日以上の猶予を与えている。新しい検出システムは、複数の場所にある衛星カメラを使って、接近する太陽嵐がどこに位置し、どの方向に進行しているかを推定する。このデータは、次に欧州宇宙機関(ESA : EuropeanSpace Agency) やNASA の太陽観測機 (SOHO : Solar andHeliospheric Observatory) によって提供される太陽自体からのコロナグラフと組み合わせて、CME がどのように地球へ向かってくるのかを明らかにする。
CME と磁気雲が大気に達すると地球磁界が影響を受けて太陽嵐になる。太陽嵐は、衛星やナビゲーション・システム、GPS システム、通信システム、航空機、送電網、ラジオ、テレビなど、多くの電子システムを壊滅させる。この新しい警告システムは、人々が太陽嵐または噴出に備えるため、あと1日の猶予を与えることになる。準備が1日分延びれば、電磁気エネルギーが地球に到達する前に多くのシステムを停止できるので、電子シ4 INTERFERENCE TECHNOLOGY日本版 2015年7月EMC NEWSステムへの損害は最小限に抑えることができる。同チームは既に8つのCME に対してシステムモデルの試験を成功させており、NASA は今後も試験を続ける予定である。研究チームの次のステップは、警告システムを使いやすくするインターフェースを作ること。NASA は、このシステムを将来、宇宙天気をモニタする際の補助として使えるのを期待している。
詳細はJilard newsのウェブへ。(2015/06/18)