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5Gサイトは良き隣人になれるか?

米メジャーリーグ野球殿堂入りの選手 Yogi Berraは、野球のフィールドスキルで有名だったが、数々の名言も同様に有名であった。彼の言葉は「ヨギイズム」とよく言われたものだが、実に興味深く洞察に富んでいた。
人気のレストランについて「もう誰も行かないよ。混みすぎているからね」と発言した。矛盾しているように思えるが、彼の言いたいことはよくわかる。人混みを通り抜けるのが難しいので、客はレストランに行けないというのである。
技術も同様で、時には厄介な結果をもたらすことがある。
5Gワイヤレスの導入により、オンラインのワンダーランドには高速化、遅延削減、大容量、広い帯域幅という新しい機能がもたらされた。5G搭載ネットワークではさらに多くのことが可能になった。技術は進化し続けており、無線通信アプリケーションにおいてもそれは変わらない。だが空港の近くでは、新しい5Gワイヤレス サイトは、航空機のレーダー高度計(RA)への電磁干渉(EMI)の可能性があるため、歓迎されない隣人となっている。
航空機で使用されるレーダー高度計は、最終進入してくる飛行機にとって安全上非常に重要である。安全な着陸は、車輪が滑走路に着く数秒前に高度を正確に把握している経験豊富なパイロットが頼りである。
新しい 5Gデバイスは、3.7~4.2GHzのCバンド内で動作する。この周波数範囲は、長年4.2~4.4GHzで動作していた高度計の周波数に近いため、無線サービスを周波数帯で同時に使用すると、干渉のリスクが生じる。
これらのスペクトラムセグメントは周波数を直接共有していないが、近接しているのでリスクが生じる可能性もある。送信された信号は、それがいかにクリーンで正確であっても、基本波周波数の倍数として現れる高調波を生成する。
RAは、航空機が最終進入を行う際に厳密に処理される微細なレーダー信号に依存しているため、特に脆弱である。信号が壊れると、円滑な着陸ではなく悲劇的なクラッシュにつながるかもしれない。
航空機の航行の安全性が最も重要な懸念事項であることは明らかである。2023年12月、米国連邦航空局(FAA:Federal Aviation Administration)は、5GのCバンド干渉がRAに与える影響に関するガイダンスを更新した。
FAAは、3.7~4.2GHzのCバンドで運用されている5G拠点からの干渉を最小限に抑えるため、航空機運航者に対しバンドパスフィルタを設置することを推奨している。電磁両立性(EMC)エンジニアは、EMIを最小限に抑えたり排除したりするために、さまざまなツールを自由に利用するが、バンドパス フィルタは、最もよく使われるフィルタの 1 つである。
不要な信号をブロックまたは迂回できるフィルタは効果的なソリューションだが、干渉の被害を受けるデバイスに(被害を受けた)後に追加される。
RAは、視界が限られた状態で飛行機が滑走路に進入するときに最もよく使われ、霧の中で着陸するには車輪が滑走路に着く前に高度を正確に測定する必要がある。航空機は、晴天時にはほとんどの場合、気圧高度計を使用してRA なしで運航できるが、使用できないと一部読み取りに依存している空港がある。航空機が飛行場に近づくと、パイロットには RAを使う必要がある着陸地点のリストが提供される。優れたEMC実践の基本的な部分は、設計上の選択やアプリケーションの制限などによる干渉の問題の発生を防ぐことである。
EMCの対策には両面性がある。デバイスとシステムは、エミッションと、そのエミッションが引き起こす可能性のある干渉を最小限に抑えるようにできる。これらのデバイスは、適度なレベルの外部無線周波数(RF)エネルギーの影響を受けないように設計することもできる。
システム計画で選択すべきことの1つはスペクトラム管理である。その管理では、干渉を引き起こすリスクと干渉の被害を受けるリスクの両方を最小限に抑えるように周波数を選択する。特定の周波数で信号が中断されることが分かっている場合、製品が適切に機能することは期待できない。
しかし、5Gの高度計干渉の可能性に関しては、ネットワーク通信事業者、航空業界、FAA、連邦通信委員会(FCC)は、それぞれの計画を調整しなかった。空港近くでの新たな5G導入計画が進むにつれ、近年は懸念が高まっていた。
初期の5Gサービスはほとんどのネットワークでは 3.5GHz帯域で開始されたが、5Gの使用が増えるにつれて、より多くのスペクトラムが部分的に必要になる。5Gのあらゆる用途をサポートするため低帯域および中帯域 (<1GHz~2.6GHz)、および高帯域 (24GHz~40GHz) のスペクトラムも展開されている。
5Gの中帯域範囲(3.7GHz~4.2GHz)は、ネットワーク通信事業者が潜在的な高度計干渉の解決に取り組んでいる中でも、依然として問題となっている。
2023年10月12日、FAAはSAFO(オペレーター向け安全警告)21007を発行し「5G Cバンド無線広帯域信号が存在する環境で運航する場合にRA に及ぼす潜在的な悪影響のリスクについて」というガイダンスを発行した。
FAA は、他の飛行フェーズでシステムを混乱させる可能性のあるRA入力信号の欠落または誤りを特に懸念している。RA入力を機能の一部として組み込んでいるシステムには、交通警報および衝突回避システム(TCAS)、地形認識警報システム (TAWS-A およびHTAWS)、ウィンドシア検出、自動飛行システムなどがある。
FAAは、5G Cバンドシステムが米国本土全域に展開されており、すべてのオペレーターとパイロットは、飛行経路上のあらゆるところに送信機の存在を想定する必要があると警告した。5G Cバンドに耐性のあるRAを装備していない航空機は有害な干渉を受けることになる。
FAAはSAFO 21007の締めくくりとして、すべての運航者に航空機に5G Cバンド耐性RAを装備することを推奨し、RAに依存するシステムの劣化に引き続き注意するよう業界に注意喚起している。
今後もますます混雑する周波数スペクトルで動作する高速技術のせいで、EMC設計の重要度は高まるばかりである。バンドパスフィルタなど技術的な修正は事象後に機能するが、隣接信号干渉の初期リスクを軽減するためにスペクトラムを管理する方が望ましい。
Yogi氏の観察は電波スペクトラム空間にも当てはまる。つまり混雑しすぎると誰もそこへ行かなくなるということである。だが、それは航空業界、通信業界いずれにとっても解決策ではない。
詳細はUSのInterference Technologyのウェブへ。(2025/01/16)
https://interferencetechnology.com/can-5g-sites-be-good-neighbors/