アンテナは、DUTとアンテナ間に自然にある静電容量によってDUTに「接続されて」いるので、シンプルな回路モデルを使ってDUT配線の電圧とアンテナ電圧間の伝達関数を計算することができる。回路モデルには図4に示すように、配線、箱、アンテナマストとアンテナのカウンターポイズ(アンテナの根元にある導電性板)の間にある静電容量全てを含まなければならない。スケールモデルではLCRメータを使って簡単に静電容量を測定できたが、実物大では非常に難しくなる。
図5は回路を書き直したものである。ここでは静電容量がある種のブリッジ回路を形成しているのが明らかである。これがアンテナ上に電圧を生じる静電容量との違いである。そのため、DUT配線とアンテナのあいだにある静電容量は、アンテナが検知されるノイズがあるのでDUTの「箱」とアンテナ間の静電容量と違うこともある。ループまわりに電圧および電圧降下を加えると、キルヒホッフの(電圧)法則により合計は常にゼロになる。このようにして一連の方程式が明らかになった。入力電圧には方程式Z7に追加しなくてはいけないインピーダンスがあるが、それは無視しようと私はRogerに話した。
ご覧の通り、図6のループ方程式を図5のブリッジから導き出してフォームに入れ、図7のマトリックス操作を実施するのは簡単であった。方程式を作るのに言及すべき電流Ia, Ib, IcおよびIdがある。これは単に一時的なものである。これを単純化しようとすることは、マトリックスを作るより面倒なことになる。マトリックスに容量値を代入することで伝達関数を求めるために、私はMathcadの古い版を使った。結果は周波数には依存しない。最終的な伝達関数はVant/Vinと推測される。Vant はアンテナマストとカウンターポイズの間にある未知の電圧であり、VinはDUTからのワイヤとDUTの間にある既知の電圧である。
測定した静電容量は表1に記した。静電容量は非常に小さい。容量性ネットワークでブリッジが形成されていて、出力電圧はDUT部品、アンテナロッドとグランドプレーン間の静電容量の差によって決定されている。出力アンテナ電圧と入力ノイズ電圧との比率は、スケールモデルから得た静電容量測定値を使って0.0044 と計算した。発生源のインピーダンスは重要ではないと判断した。それぞれのインピーダンスは、モデルが縮尺通りなので、実物大のチャンバに釣り合う静電容量と比例的に同じ量になるだろう。
それぞれのエレメントはブリッジ回路内で大きな影響力を持つ。この方法について最大の欠点の1つは、このような小さな静電容量の測定に誤差を生じやすいことである。例えば、容量値を四捨五入すると電圧伝達率がおよそ50 %増加する。
Rogerにコンピュータで模型を作ったことがあるか?と尋ねられたので、Maxwell 3Dを使ってFEAモデルを作り、伝達関数の正確性を調べたことがあると答えた。FEA静電モデルを2個作った。1つにはワイヤハーネスを表す1本のワイヤを、もう1つにはワイヤハーネスを表す2本ワイヤがあった。興味深いことだが、私はモデルを後ろ向きに作った。アンテナに電圧を加え、DUTとハーネス間に設けた1 mmのギャップに沿って電圧を測定した。解決策を得るためには、チャンバの壁を固定電位0 V にする必要があった。モノポールのベースおよびモノポールへのケーブルはチャンバに接続し、それらも0 Vの固定電位に設定した。容量性ネットワーク同様、発生源インピーダンスは無視した。
モデリングの長所の1つは、試験パラメータに対する実用的な制約による制限がないことである。モノポールアンテナ・ロッドとベース間に1000Vを加えると、2本のDUTワイヤ間のどちらかとDUTの間の電圧出力は、3.65Vであった。しかし、DUT ワイヤ2本の間の電圧は、わずか0.0485Vであった。これにより、アンテナへの連結が主にコモンモードであるという仮定は証明されたが、リード線の各々の電圧が同じである場合だけ、アンテナで発生する電圧がある。ワイヤハーネスを1本の
ワイヤで示すと仮定したのは、従って論理的であった。DUTへ1本だけのワイヤを接続した追加モデルを計算すると、結果は4.8 Vとなった。従って、スケールモデル(高価なライセンス料なしで)が0.0044の伝達比率を予測するのに対して、FEA は0.0048の伝達比率を予測した。
つまり、スケールモデルが伝達比率0.0044を(高価なライセンス料なしで)予測したのに対して、FEAは伝達比率0.0048 と予測した。
実用的な試験は、コムジェネレータを使って実施した。図8は、測定されたDUTの電圧である。EMCO 3301Bのアクティブ・モノポールアンテナからの出力を、EMIレシーバを使って、直接測定した。アクティブ・アンテナなので、これは測定されたデータから電圧を得ることに多少関与していた。アンテナ・マニュアルに書いてあるいろいろなファクタを使われなければならない。各々の電圧伝達比率に予測されたアンテナ電圧について、FEAは図8、スケールモデルは図9に示す。伝達比率は、アンテナ測定値およそ5 MHzまで予測できただけだが、長波とAM帯については十分な結果だった。
単純なファクタ(約0.0044)を使って、アンテナが何を測るか予測することが可能である。これは、試験デバイスの回路モデルに取り込むことが可能で、回路変更が試験に適合するかどうか評価できる。これは、20 kHzのような低周波で変わる電源スイッチング回路を持つデバイスに役立つことがある。
エンジニアでいることはとても楽しい!テープとフォームボードを使って、場の方程式を解く複雑なプログラムと同じ結果を得られるなんて最高だ!ちょっとした基礎知識とよく切れるハサミがあればよい。Rogerも同様に学んでくれたらと願っている。
参考文献
・C.R. Suriano, G. Thiele, J.R. Suriano, “Low Frequency Behavior of a Reverberation Chamber with Monopole Antenna,” 2000 IEEE EMC Symposium, Washington, DC, August 2000.
・Henry W. Ott, Electromagnetic Compatibility Engineering, John Wiley & Sons, Inc., 2009, pp. 464-465
2018年4月27日 by Candace Suriano