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産業オートメーションシステムのEMI/EMC問題(3/3)

Peter:
4: 結論
EMIの観点から、また極めて短い観察結果にのみ基づくなら、s設置には堅牢さが欠けていて、現在または今後の生産に影響する断続的/厄介な故障が起こるリスクがあると思います。既存の設置に対する懸念全てに対応するのは明らかに実現困難なので、より実用的でリスクに基づいた方法を推奨します。これには機器および相互接続ケーブル周辺での目立たない測定が必要で、それも通常動作中つまりプロセス実行中におこなう必要があります。問題が見つかれば、次にローカルなソリューションを実施することになります。

Keith: 全くそのとおり! 多くの大規模なシステム/設置は出力レートを減らしたり出力性能を下げるという問題を抱えていることも補足しておきましょう。このような問題は断続的で明確なパターンがないことが多いのですが、(製品の数パーセントが保証付きで返品されているメーカーと同様に)それでも何とかやっていけます。
 私の経験では、このような問題は本稿で延べてきたようにEMCの実施がうまくいっていないことから生じることが多く、原因がわからないため制御できないので、システム/設置への小さな変更でさえ「突発的な問題」を発生させ、致命的になってしまうのです。
 これは、変更が意図的であろうとなかろうと起こることです。例えば、問題は単に機器の老朽化によるものかもしれません(機器のEMC性能は常に時間の経過とともに悪化します!)。

Peter: PROFINETネットワークの性能に対する推奨に従い、EthernetIPネットワークにも同様の適用をすべきです。このような方法は、ハンドオーバーに先立って低レベルの機器間通信をチェックします。PLCアラーム/診断技術の欠如に頼るのは十分に良いとは思われず、ネットワークは断続的な故障のリスクを抱えたままとなって解決は難しく時間のかかるものとなるでしょう。これは、比較的取り組みやすい課題です。

Keith: そうですね、PROFIBUS/PROFINETは単にデータ通信の事例に過ぎず、全てのデータ通信は同様のEMC問題に悩まされています。エラー修正プロトコルが脆弱なので問題が深刻になる例もありますが、とにかく全てのデータ通信に問題があるのです!
 現代のデジタル・データ通信の問題は、エラー修正によってEMI問題が見えなくなってしまうことで、見つかったときは手遅れになっています。例えば、古いアナログテレビなら画面のノイズを見ればEMIがあるかどうか常に判断でき、問題が深刻化して観たい番組が観られなくなる状況に陥る前に解決すべき問題があるかどうか、わかりました(必要なのは壁をドンと叩いて隣人に電気ドリルを止めてもらうことぐらい、という場合もありますが!)。
 しかし現代のデジタルTVでは画面はいつも美しいままか、そうでなければ何も映らないかであり、EMIが生じているかどうかは全くわからないのです。デジタルTVを「壊れている」からと購入した店に返却しても、代替品もまた「故障」、その次もまた同じという繰り返しになってしまう人が多いそうです。店では何の問題もないのに家に持ち帰るとダメになるのです。
 テレビを何度か購入店で交換した人が、これは何か他に原因があるに違いないと思って全く新しいアンテナを設置し、壁に埋もれていた同軸ケーブルも交換した例を知っています。根本的で費用のかかる行為です。ですが、新しいアンテナは何の効果もなく、新しいテレビは依然として家では動作しませんでした(店では大丈夫なのに)。結局のところ、この人は充電器に置いてあったコードレスフォン(DECT Phone:Digital Enhanced Cordless Telecommunications Phone)の場所をテレビから少し離しただけで問題は解決しました!
 多くの工業データ通信は今にも全く動作しなくなりそうな危機にあり(おそらく次に時代遅れになるモータ・ドライブが最新のVSDに置き換えられる際に)、必要なのは、ほんの少しのノイズが容認できないほどに信頼性がなくなることです。これを「デジタルの崖(digital cliff)」と呼ぶ人もいますが、EMIがあっても「崖から落ちて」動作が止まる直前までデジタルシステムは順調に動作するということです。この方法で1 GWの発電所が数週間止まってしまったことが実際にありましたが、非常にコストがかかります!
 財務的リスクのレベルが許容できるかどうかが全てであり、十分なEMC設計/構築を節約(例えばIEC 61000-5-2:1997を完全に適用しないことなど)した設置はほぼ例外なく「うまく逃げ切れる」ことに満足するかもしれません。実際は、目隠しして崩れそうな崖の間近に立っていたことなど、知るよしもないのです。
 もちろん、クランプオンRF電流プローブやコンパクトなスペクトラム・アナライザを使ってシンプルで迅速な確認をすれば、起こりそうなEMI問題は特定できますが、データ通信がどれほど崖に近づいていて危険な状態なのかを知ることはできないでしょう?
 先日、どれぐらいのエラー修正が進んでいるかPLC が常に明らかにするわけではないとあなたは言っていましたが、それができるPROFIBUSおよびPROFINETネットワーク・アナライザがあれば、過剰なEMIのせいでシステム/設置が信頼性の欠如という「崖の先端」にどれほど近づいているのかわかります。あなたが持っているような、エラー修正がどれほど過重になっているかがわかる特別なデータ通信アナライザを使うことは、リスク管理の観点から見て全ての工業用設置に必要なことだと思います。
 問題がわかれば、シンプルで迅速なEMI測定によってその問題がEMIに起因するかどうか特定し、EMIの実際のレベルを軽減しようとする対策を取るか否か判断できます。

【Peter Thomas】
 Chartered Engineer(C.Eng)/(EurIng)で、PROFIBUS and PROFINET International Training Centre Workgroup(PITC)の議長、PROFIBUS UK Steering Committeeのメンバー、Application, Training & Engineering Centre of Endress + Hauserのインストラクターである。またPROFIBUS認定エンジニア、PROFIBUS認定設計者、Siemens Certified Network Professional(セキュリティ)である。
 工程および生産オートメーションの複数部門で30年以上にわたる実践経験があり、直近の24年間はControl Specialists Ltd.で勤務。同社ではソフトウェア設計、GAMP評価、PIDループ最適化、制御システムサポート、工業用ネットワーク評価およびサポート(AS-I、PROFIBUS、PROFINET)、プロセス制御の開発と実施、PROFIBUSおよびPROFINETの教育訓練などを歴任した。製薬、水処理、化学、ガラス、オイルおよびガス、食品業界の顧客を担当し、オーストラリアや米国、欧州の数ヵ国でのプロジェクトや教育訓練の実施に携わっている。
●連絡先: peter.thomas@controlspecialists.co.uk
www.controlspecialists.co.uk
www.linkedin.com/in/petermthomas

【Keith Armstrong】
 Keith は1972年にロンドンのImperial College電子工学科を優秀な成績で卒業。1977年以降、IEE/IETのメンバーで、2010年にはIETフェローおよび IEEEシニアメンバーとなった。
 電子設計者として経験を積んだ後、プロジェクトや設計部門のマネージャーを歴任し、1990年にCherry Clough Consultantsを創立して、有効で実用的なEMC工学を実施することで顧客が財務リスクやプロジェクトにかかる時間を減らすサポートをしている。
 過去27年にわたって設計コンサルティングや教育訓練を担当し、世界中の800を超える顧客に対して、さまざまな製品や用途で数多くのEMI問題を解決している。論文執筆も多く、EMC工学技術の実践やEMIが原因の機能性安全リスク管理についての本3冊と多くの記事を発行している。
 記事および教育訓練の多くは、最近新しいウェブemcstandards.co.ukに掲載されるようになった。
 IETのEMCや機能安全に関するWorking Groupで1997年以来、議長を務め、英国から61000-1-2(機能安全のEMCに関する基本規格)、60601-1-2(医用機器EMCのリスク管理)、61000-6-7(機能安全のEMC共通規格)に関するIEC委員会の専門家に任じられている。2015年以来、“IEEE Standard Practice for Techniques and Measures to Manage Functional Safety and Other Risks with Regard to Electromagnetic Disturbances”を目指すIEEE規格P1848チームの議長にもなっている。
●連絡先: keith.armstrong@cherryclough.com
www.cherryclough.com
www.emcstandards.co.uk