スイッチング電源からの過剰な伝導エミッションに直面した際、最初に調査し、その妥当性を決定すべきなのは電力源ラインフィルタである。電源線経由のスイッチング電源には、一般化した図1の回路図にあるように、通常、フィルタにコモンモードとディファレンシャルモード両方のセクションがある。
LISN(Line Impedance Stabilization Network:電源インピーダンス安定化回路網)を使う場合、実際には伝導電圧のコモンモードとディファレンシャルモードの合計を測定している。一例を図2に示す。ここではVelleman 社製の 12V / 2A のスイッチング電源(モデルPSIN02512N)を測定している。合計のエミッション値はそれほど悪くないが、0~2 MHz の測定値にズームしてみるとノイズが詳細に見えてくる。
図3はその測定結果である。電源線とニュートラル間の測定値に注意してほしい。適切に設計された電源では普通、ほぼ同じ測定値を示すので、これは明らかにフィルタ回路内に何らかのアンバランスがあると見てよいだろう。
ディファレンシャルモードとコモンモードエミッションを別々に取り出すにはカレントプローブを使う。これは電圧であるLISN 測定値と直接比べるのではないことに注意が必要だが、どちらにノイズが多いのかについては有益な情報が得られる。コモンモード電流の測定手順は、よく知られている。カレントプローブでラインワイヤおよびニュートラルワイヤ両方の周囲をクランプして測定する。コモンモード電流は両方のワイヤに同じ方向で流れ、普通は放射されるとともに電源線に伝導して戻ることも忘れてはならない。これは図6の黄色いトレースが示している。
一方で、ディファレンシャルモード電流を測定しコモンモード電流を相殺するには、カレントプローブを通って逆方向に供給するワイヤ構成を測定する必要がある。この場合、電圧値は実際のディファレンシャルモード電流の2倍(6 dB高く)になることに注意する。これは図6の紫色のラインで示されている。
図6では、ディファレンシャルモード電流はコモンモード電流より実質上は大きいとわかることに注意する。これはつまり、ラインフィルタのコモンモードセクションが適正であることを意味する一方、ディファレンシャルモードのフィルタリングに余計な作業をしているということである。例えば、ライン側の小さな直列インダクタはX コンデンサ(Cx)と共に動作するため、もっと大きなインピーダンスを供給する。伝導ノイズ電流をコモンモードとディファレンシャルモード要素に分離するこの技術は、トラブルシューティングツールとして役立つことがあるだろう。
図1.電源線フィルタの一般的な回路。赤枠はコモンモードフィルタ部品を、Cx はディファレンシャルモードのコンデンサフィルタを示す。
図2.LISN を使って伝導エミッションを測定する一時的なセットアップ
図3.LISN を使った伝導エミッション測定
図4.ラインワイヤおよびニュートラルワイヤ両方でのコモンモード電流測定。私は通常、ワイヤの周りに絶縁材を詰めてカレントプローブの金属ケースに当たらないようにしている。
図5.ディファレンシャルモード測定用のワイヤ構成
図6.コモンモード(黄色)とディファレンシャルモード(紫)の測定値。ディファレンシャルモードに主要なノイズが含まれている様子に注意してほしい。