放射および伝導エミッションの測定には、狭帯域および広帯域の妨害源が両方とも含まれていることがよくある。では「狭帯域」と「広帯域」の信号の違いは何だろうか?
【狭帯域と広帯域の信号】
スペクトラム・アナライザを使って測定した信号が狭帯域か広帯域か区別するには、受信機の帯域(RBW:Resolution Bandwidth分解能帯域幅)に全面的に依存する。民生機器のEMI信号については、試験規格によりRBWのあるべき姿が規定されている。例えば、150 kHz ~ 30 MHzを測定するとRBWは9kHz と特定される。30 ~ 1000 MHzの測定ではRBWは120 kHzである。元々これは一般的な放送電波(AM、FM)受信機の帯域として定められていた。
図2は9 kHz ~ 1.5 GHzを見た場合の高調波信号2種類の違いを示している。この例ではRBWを30 kHzに調整してある。一般的にDC-DCコンバータあるいはデータ/アドレスバスデータは、いくつかの共振ピークを伴う非常に広帯域の信号として現れる(図2では紫の線)。一方、水晶発振器やハイスピードクロック(何であれ高速のswitching edge speedを持つもの)は一連の狭帯域スパイクとして現れる(図2内の青い線)。製品がEMC適合品として設計されていない限り、この2種類の信号は放射または伝導を発生し、高周波エネルギーが携帯電話の使用帯域にまで達する。
RBWを1 kHzあたりまで下げることによって、DC-DCコンバータや他のスイッチング電源からの高調波を分離できることに注意してほしい。信号が実際に狭帯域であることがわかるはずである!つまり、一連の高調波信号は狭帯域でも広帯域でも両方可能なのである。全てRBW次第ということだ。この概念について詳細に記載した有用な資料がRohde & Schwarz社に2つあり、来る2017年4月25日~27日のEMC Liveで、この件についてウェブセミナーが開催される。セミナーは4月27日(火)の予定で、現在登録期間中なのでEMC Live のプログラムを確認することをお勧めする。
【ウェブセミナーの詳細】
狭帯域/広帯域~その識別はむずかしいだけでなく、システムレベルのEMCを知るヒントにもなる。
試験所のデモを見ると、無線チャンネルをサンプリングしてノイズを聞くという以前の方法と対照的に、現在のEMC試験がなぜスペクトラム・アナライザ・ノイズフロア測定を使用しているかわかる。セミナー出席者は、被害者側無線機が適切に信号を受信する能力、および妨害がある場合にテストエンジニアが適切に識別できる能力、その両方に関する狭帯域/広帯域ノイズの影響を目の当たりにするだろう。
● EMC Live
http://emc.live
[参考文献]
1. Rohde & Schwarz, Measuring with Modern Spectrum Analyzers,https://cdn.rohde-schwarz.com/pws/dl_downloads/dl_application/application_notes/1ma201_1/1MA201_9e_spectrum_analyzers_meas.pdf
2. Rohde & Schwarz, Making Spectrum Measurements with Rode & SchwarzNetwork Analyzers, https://cdn.rohde-schwarz.com/pws/dl_downloads/dl_application/application_notes/1ez62/1EZ62_0e.pdf
図1.RBW(図内の受信機通過帯域)の範囲に収まっている狭帯域信号の理想的な例、およびRBWの範囲内にエネルギーが収まらない広帯域の例(図提供:Hewlett Packard)
図2.一般的に高周波高調波には狭帯域(青い線)と広帯域(紫の線)の2種類がある。黄色の線は測定システムのノイズレベルを示しているが、測定システムの測定限界ラインを記録することは常に良いことである。