毎年アクセスの多い記事を把握して、読者の好みを調べるように心がけている。テクニカルエディターとしてランキングデータを活用し、2017年もよく読まれる記事を掲載できるよう努めたい。下記のトップ10にはEMCの基礎、適合性を満たす製品設計、EMC規格アップデート、医用EMC、車両関連のEMC、軍用EMCなどが含まれている。では、2005~2016年で最も人気のあった記事を順番に紹介していこう。まずは1位から。
◆1位◆「電磁妨害源と、その妨害源による最も重要な影響」
Anthony DiBiase / Spec-Hardened Systems
電磁環境(EME)の密集度が高くなるにつれ、電磁妨害源の影響により作り出されるEMI が増加する懸念も高まる。科学技術の進歩と製造される製品の数は、我々の社会で使われている製品とシステムの相互運用や、必要な動作を維持しようとする努力に対して重大な影響を与えている。つまり責任者にとっては、このような製品やシステムにおける電磁両立性(EMC)の要求レベルを維持する際に必要とされる努力とペースを合わせるという課題が加わることになる。
英文記事:(2011年5月5日発行)
Electromagnetic Interference Sources and Their Most Significant Effects
日本語:2012年01月号(30号)「電磁妨害源と、その妨害源による最も重要な影響」※要ログイン
◆2位◆「高周波(HF)電流プローブ:理論と用途」
Kenneth Wyatt / Wyatt Technical Services LLC
この記事はEMCエンジニアの行う「あらゆる手段」の中で、最も価値あるツールの1つ、高周波電流プローブを扱っている。電流プローブは、ワイヤやケーブルに流れる高周波のコモンモード(またはアンテナ)電流を測定するのに非常に有益である。経験によれば、うまく終端されていない(接続部またはフィルタ)ケーブルは、試験施設における放射エミッション障害の原因No.1であることがわかっている。このようなケーブルのコモンモード(CM)電流を測定することにより、開発研究の途上にある製品のトラブルシューティングや修正が可能で、試験所で試験時間が時々刻々と過ぎていく中、修正を試みる時間を大幅に減らしてくれる。また記事中では、DIYで簡単に作ることができ、いざと言うときに非常に役立つプローブの作成方法もいくつか紹介している。
英文記事:(2012年3月20日発行)The HF Current Probe: Theory and Application
日本語:2013年01月号(36号)「高周波(HF)電流プローブ:理論と用途」※要ログイン
◆3位◆「民間航空のための新EMC要求:RTCA/DO-160G」
Eric Bergstrom / Environ Laboratories
RTCA/DO-160G はRTCA 特別委員会135が作成した航空機搭載機器の環境条件および試験手順で、DO-160Fの後継として2010年12月8日に発行された。DO-160Gは、航空機搭電子電気機器(アビオニクス)の試験の標準手順と環境試験基準を定めている。DO-160Gで規定されている試験は、一般的に民間航空機に搭載される電子電気機器を対象とする米国連邦航空局(FAA:Federal Aviation Administration)やその他国際的な規則に適合するよう実施されている。
英文記事:(2011年5月5日発行)
New EMC Requirements for Commercial Avionics: RTCA/DO-160G
日本語:2012年03月号(31号)「民間航空のための新EMC要求:RTCA/DO-160G」※要ログイン
◆4位◆「放射妨害波測定距離、1/3/5/10/30メートル」
Daniel Hoolihan / Hoolihan EMC Consulting
放射エミッション測定はEUT から受信アンテナまでの水平距離を常に提示する点で独特である。その水平距離が1、3、5、10、30メートルの場合と、その距離に対する規格の限度値がこの記事のテーマである。
英文記事:(2010年5月5日発行)Radiated Emission Measurements at 1/3/5/10/30 Meters
日本語:2010年11月号(23号)「放射妨害波測定距離、1/3/5/10/30メートル」※要ログイン
◆5位◆「接地でEMIを抑える電子システムのEMC設計」
William Duff / SEMTAS
エミッション問題の発生を防ぐために、機器またはシステムその他どの部分でも、効果的な接地システムを慎重に設計し、実施しなければならないという認識は不可欠である。接地はシステムの課題であり、接地処理をうまく機能させるために、よく考えて正確に設計し実施しなければならない。接地構成は、いろいろな機能的な回路と同様、形状と周波数を考慮しなければならない。
英文記事:(2011年11月6日発行)
Designing Electronic Systems for EMC: Grounding for the Control of EMI
日本語:2012年07月号(33号)「接地でEMIを抑える電子システムのEMC設計」※要ログイン
◆6位◆ 「立ち上がり時間対帯域幅と適用」
Mekonen Buzuayene / Anritsu Corporation
オシロスコープやスペクトラム・アナライザのような測定装置では、妥当な振幅精度で測定できる最大立ち上がり時間(tr)は、装置の-3 dB帯域幅(B)と直接関係している。この記事では、その計算について説明している。
英文記事:(2008年12月30日発行)Rise Time vs. Bandwidth and Applications
日本語:2008年04月号(7号)「立ち上がり時間対帯域幅と適用」※要ログイン
◆7位◆「医用電気機器の新国際規格:IEC60601-1-2」
Dan Hoolihan / Hoolihan EMC Consulting
最も有名で最も使われている医用電気機器の電磁両立性規格は、IEC 60601-1-2( “-2”)で、表題は「医用電気機器 – 第1-2部:基礎安全及び基本性能に関する一般要求事項 – 副通則:電磁両立性 – 要求事項及び試験」である。この規格の最新版は2007年3月に第3版として発行された。国際電気標準会議(IEC)の技術委員会であるTC62(医療活動に使用される電気機器担当の技術委員会)傘下のSC62A(共通事項担当の小委員会)に設けられた第23メンテナンスチームによって、この規格は現在見直しが行われている。本稿では、第2版から第3版への重要な変更について解説し、“-2”規格の重要な要求事項について考察して、この規格の将来像について述べる。実際の規格は長く、詳細に記述されているので、ここでは概要に留めた。
英文記事:(2008年6月10日発行)
The International Medical Device EMC Standard— IEC 60601-1-2
日本語:2009年06月号(14号)「医用電気機器の新国際規格:IEC60601-1-2」※要ログイン
[※編集者注] この規格の第4版が2016年に発行されている。詳細については「2017 Europe EMC Guide」よりダウンロード可能。
◆8位◆「データセンターの電磁干渉:シールドするか否か」
Jordi Ferri / Shielding, Power & Cooling Division ManagerAdvanced Shielding Technologies Europe S.L(. AST)
データセンターの設計時には多くのことを考慮しなければならない。希望する「ティア」(Tier)サービスレベル次第だが、そのうちの1つは性能および稼働停止時間である。Tier IIIおよびTier IVのデータセンターについては、要素の冗長性は別として、将来の予期せぬ事故を防ぎ、ホスト内のシステムの動作可能時間を保証するために考慮が必要となる潜在的脅威や設計規則がある。
英文記事:(2011年9月5日発行)
Electromagnetic Interference in the Data Center: To Shield Or Not To Shield
日本語:なし
◆9位◆「2.4 GHz ISMデータ送信機の新しいEU要求事項と試験方法」
David Zhang / Nima Molaei, Leslie Bai
2015年1月1日より、2.4GHzのISM(工業・科学・医療機器) データ送信機に適用する欧州連合(EU)指令の新しい要求事項が強制適用となる。本記事は、適合確認に必要な規定の概要を述べ、現在の規格ETSI EN 300328 V1.7.1(2006)と新しい規格ETSI EN300328 V1. 8. 1(2012)の違いについて、詳細に解説する。独自の試験セットアップの一部や、新しく要求される試験方法についても紹介する。
英文記事:(2014年9月15日発行)
New EU Requirements and Test Methods for 2.4 GHz ISM Data Transmission Equipment
日本語:2015年03月号(49号)「2.4 GHz ISMデータ送信機の新しいEU 要求事項と試験方法」
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◆10位◆「費用を抑えたEMIトラブルシューティング・キットの組み立て:パート1(放射エミッション)」
Kenneth Wyatt / Wyatt Technical Services LLC
社内あるいは独立系のEMCコンサルタントである我々は、EMIトラブルシューティング・キットを自分で組み立てることで大きな利益を得ることができる。私自身、自作のキットに数年間、頼っているが、これは役立つと同時に、場合によっては自社の製品開発エンジニアやマネージャー、顧客に対応する際にプロ意識を見せることができることもわかった。
英文記事:(2016年5月13日発行)
Assembling A Low Cost EMI Troubleshooting Kit – Part 1( Radiated Emissions)
日本語:2016年10月号(59号)
「費用を抑えたEMIトラブルシューティング・キットの組み立て:パート1(放射エミッション)」※要ログイン