NASA(アメリカ航空宇宙局)のエンジニアグループは2016年に、月より遠い距離から高解像度のビデオをストリーミングできるレーザーを使った新しい通信方法を発表する予定である。
NASA によると「この劇的な高速送信は、NASA のOfficeof the Chief Technologist (OCT) が実験に選んだ3つのプロジェクトの1つであるレーザー通信リレーデモ(LCRD:LaserCommunications Relay Demonstration)により実現される。メリーランド州グリーンベルトのNASA Goddard Space FlightCenter でエンジニアチームが開発するLCRD は、 カリフォルニア州パロアルトのSpace Systems/Loral 社が開発した商用通信衛星の相乗りペイロードとして打ち上げられる予定である」という。「NASA は高速データレートの無線周波数システムやデータ圧縮、既存システムが扱えるデータ量をアップする他の技術を開発していたが、当局の能力では最新装置や将来の人類の探査に関して予想されるデータのニーズに応えきれないと判断した」と LCRD の研究責任者Dave Israel 氏は語った。Israel 氏は、カリフォルニアにあるNASA のJet Propulsion Laboratory やマサチューセッツ州ケンブリッジにあるMassachusetts Institute ofTechnology のLincoln Laboratory などのエンジニアから成る混成チームのリーダーである。「解決策はNASA の時代遅れの無線式ネットワークを増強することで、それには追跡・データリレー衛星や地上局のネットワークなどがあり、どんな値でもデータレートを10~1000倍増加できる光学システムも含まれる」とIsrael 氏は話している。
NASA によれば「ペイロードには望遠鏡、レーザー、鏡、検知器、指向・追跡システム、制御電子回路、モデム2種類などが搭載される。モデムの1つは深宇宙(地球の大気圏外の宇宙空間)でのミッションあるいは地球低軌道で運用する低電力の小型通信衛星用であり、もう1つは特に国際宇宙ステーション(ISS:InternationalSpace Station)など地球周回軌道の宇宙探査機からの高速データレートを扱う。ペイロードがデータを受信するとすぐに、ハワイと南カリフォルニアに予定されている地上局にリレーされる。地上局は複数あるので悪天候で信号の送信や1ヵ所での受信ができなくなった場合でも、ネットワークを使って別の地上局に変更したり、保存しておいて後から再送信することができる。このデモンストレーションには2~3年かかる見込み」という。
詳細情報は、NASAのウェブサイトを参照。(2016/03/31)