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Notre Dame研究チーム,新しい超電力効率5Gアンテナを開発

June, 3, 2025, Notre Dame--ノートルダム大学の研究者が超電力効率の高い新しい5Gアンテナを開発した。
世界では、20 億人が第 5 世代 (5G) ワイヤレス ネットワークを利用している。これらのユーザにとって、モバイルデバイスでのアップロードとダウンロードの速度が速くなり、遅延が短くなり、信頼性が向上した。しかし、5G技術の展開には、急なエネルギーコストも伴う。5Gネットワークは前世代よりも多くのエネルギーを必要とし、各基地局は米国の73世帯分に相当するエネルギーを消費している。

現在、米国陸軍からの資金提供を受けて、ノートルダム大学(University of Notre Dame)の研究チームは、この傾向を逆転させるのに役立つ可能性のある取り組みを開始している。チームは、低出力アンテナの物理学について大学で実施された先行研究を適用する。研究チームは、一連の業界パートナーと協力して、エネルギーの 10% 未満を使用しながら 5G レベルのパフォーマンスを提供するアンテナを製造することを目指している。

このチームは、電気工学科の准教授であり、ノートルダム大学の無線研究所の関連会社であるJonathan Chisumが率いている。Chisumによると、新しいアンテナの鍵は、同氏の研究室で設計および製造された一種の人工誘電体材料である。

「現在、セルラーネットワークの運用コストの大部分は電気代である。セルタワーを見ると、その理由がわかる。バンドごとに異なるアンテナを使用し、これらはアクティブな電源チップに依存している」(Chisum)。
「当初のアイデアはシンプルで、電力を大量に消費する多くのチップが通常行う仕事を材料の物理学に任せることで、同様の機能を1つの非常に広帯域のアンテナに設計できたらどうなるか、というものだった。」

今回開発した低電力アンテナは、ミリ波屈折率(GRIN)レンズアンテナの一種である。GRINレンズは1世紀以上前から存在しているが、5Gネットワーク用のGRINレンズアンテナを開発するというアイデアは、かつて無線技術分野のほとんどの研究者にとって突飛なことのように思われていた。しかし、過去8年間で、Chisumと同氏の研究室は、広帯域ビームステアリングの基礎科学において画期的な発見をした。これらの発見により、チームは、かつては不可能と考えられていた5Gのすべての周波数帯域で動作できる1つのアンテナを作成することができた。

このアンテナは広帯域で低電力であるため、特に米陸軍にとって有用である。陸軍は5G技術の開発に関与しており、安全な通信だけでなく、機器の追跡や兵士の健康状態の監視にも5Gに依存している。しかし、現在の5G技術は、現場でのセットアップ、輸送、運用が難しく、コストがかかる。

「陸軍は世界中で5Gネットワークを運用する必要がある。5Gネットワークは世界中で様々な周波数で運用されている。したがって、われわれのような広帯域ソリューションは不可欠な機能である。また、消費電力が非常に少なく、比較的小型で軽量であるため、モバイルプラットフォームに統合できる。」

実装されると、この技術は、効率、安全性、および汎用性が向上した「5G-on-the-move」ソリューションとなる。

Cisumは、この新技術の開発が、民間用のモバイルネットワークに統合するための最初のステップでもあることを強調した。

「現在の5Gネットワークにおける5Gミリ波基地局の展開は停滞している。これは、通信事業者が現在のマルチアンテナソリューションのコストを支払う余裕がないためである。しかし、GRINレンズをベースにした広帯域5Gアンテナは、商用無線ネットワークのコストと効率を下げるための新たな可能性を開く」とChisumはコメントしている。

これまでのところ、Chisumと同氏のチームは、100時間の詳細なプロセスを通じて、一度に1つの薄い層をラボで製造するデザインの実用的なプロトタイプを持っている。チームは、最先端の3Dプリンティング技術を使用してデバイスを製造するための効率的で費用対効果の高い方法を開発している。また、Chisumのチームは現場でこの技術を実証し、5Gネットワークへの導入への道を開くことができる。

この技術を研究室から現場に移行するために、Chisumの研究室は業界パートナーのチームを結成した。チームには、GRINメディアに特有のワイヤレスネットワーク、アンテナ、アディティブマニュファクチャリング(積層造形)の専門知識を持つ複数の主要ベンダが含まれている。

Cheshir IndustriesのCEO、Nicolas Garciaは、「Cheshir Industriesチームは、ノートルダムの5Gオンザモーションアンテナ開発プログラムのレンズとアレイの設計作業を主導できることを誇りに思い、喜んでいる。このプロジェクトは、我が国の無線能力を向上させるための重要な一歩であるだけでなく、広帯域GRINアンテナシステムの商業化と開発における大きなマイルストーンでもある」とこめんとしている。
Cheshir Industriesは、ノートルダム大学のIDEAセンタの支援を受けて設立された。これは、ノートルダム大学の電気工学博士課程の卒業生であるNicholas Estes(’22 Ph.D.)とともに、Chisumによって共同設立された。