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垂直磁気記録がIEEEマイルストーン認定

東北大学特別栄誉教授の岩崎俊一氏が発明した「垂直磁気記録」が、「IEEEマイルストーン」に認定された。

【銘板の翻訳】
IEEEマイルストーン
垂直磁気記録、1977
1977年、岩崎俊一教授は東北大学のチームを率いて、軟磁性裏打ち層を有するコバルト合金薄膜垂直媒体に単磁極ヘッドで書き込む磁気記録システムを開発した。この媒体の構成により、面内磁気記録を超えるデータ記録密度が可能となった。2005 年以降、垂直磁気記録は、磁気記録装置の記憶容量増強に非常に重要な役割を果たしている。

垂直磁気記録の論文が初めて発表されたのは、1977年米国Los Angelsで開催されたIEEE INTERMAG国際会議でのことである。面内磁気記録の高密度記録限界の状況を詳細に観察した結果、磁化が丸く閉じて信号を発生しなくなるサーキュラー・モードが発見され、この限界現象の中から垂直方向に磁化を記録する可能性を見出し、垂直磁気記録の発明へとつながった。
実験によって垂直方向に信号を記録できる垂直記録異方性を持つCoCr(コバルト・クロム)垂直記録媒体が発見され、軟磁性薄膜を用いた単磁極型垂直記録ヘッドで媒体の垂直方向に信号磁化を記録する方式を開発。さらに垂直記録媒体の下に軟磁性裏打ち層を配置することによって、信号記録・再生の性能を飛躍的に高めることにも成功し、基本的な構造は完成した。それから28年を経て、2005年に垂直磁気記録を用いた最初のHDDが実用化され今では全てのHDDに垂直磁気記録が使われている。
上記の詳細については、IEEEマイルストーン申請時の資料を参照されたい。
https://ieeemilestones.ethw.org/Milestone-Proposal:Perpendicular_Magnetic_Recording

2023年10月9日、ウエスティンホテル仙台で、贈呈式および記念祝賀会、記念講演会が開催された。銘板はIEEE次期会長 Thomas Coughlin氏より東北大学総長 大野英男氏に贈呈された。記念祝賀会は昼食を兼ねて行われた。

岩崎俊一氏の2022年インタビュー動画がIEEE MAGNETICSのWeb上で紹介されている。
https://ieeemagnetics.org/presentation/online/prof-shunichi-iwasaki-inventor-perpendicular-magnetic-recording
記念講演会は以下のとおり、3つのテーマで実施された。

●「IEEE マイルストーン概要」
講演者:IEEE Japan Council History Committee Chair 白川功氏
日本のIEEE Milestone 受賞リストや申請中および検討中の案件を紹介。

●「垂直磁気記録の社会文明への貢献」
講演者:東北大学 電気通信研究所 教授 田中 陽一郎氏
垂直磁気記録の開発の経緯や社会貢献について説明。

●「データストレージ産業と垂直磁気記録」
講演者:Western Digital Japan 高野 久史氏
HDDの製品開発における2038年頃までの未来予測について容量や技術を紹介。

詳細は東北大学のウェブへ。(2023/10/3)
https://www.tohoku.ac.jp/japanese/2023/10/press20231003-01-ieee.html