1.はじめに―RS101とRS103の概要説明
本稿はMIL-STD-461の最新バージョン「G」版のアップデートなど、RS101とRS103について論じる。この試験は、デバイス関連ケーブルに電磁界として存在する不要な信号を許容するデバイスの能力を定量化する。電磁界は妨害波をデバイスの回路に結合させる可能性があり、デバイスの性能劣化や破損の原因になる。
この試験方法はMIL-STD-461 試験プログラムの一部であり、冒頭からRS01(磁界)、RS02(誘導磁界)、RS03(14 kHz ~10 GHz の電界)、RS04(14 kHz ~ 30 MHz 平行板電界)とナンバリングされている。MIL-STD-461では、さまざまな用途に用いる適用性と試験レベルを指定していた。さらに、どんな特定用途でも試験レベルの確立に予想される環境を決定するためMIL-HDBK-235への参照がなされている。
RS01磁界試験は、周波数範囲30 Hz ~ 30 kHzにわたって試験品から5 cmの場所に放射ループを置くという現在の形とほぼ同じく完成されていた。1 オームの抵抗をループにつながる配線に挿入し、その両端の電圧を測ると、 1ボルトの場合、ループ電流は1アンペアである。放射ループは、ループを流れる電流が1アンペア当たり50 mTが発生するように設計されている。仕様に規定された試験レベルの160 dBpTプラス20 ~ 30 dBという低い周波数許容レベルとすれば、電流はおよそ20アンペア 必要となるだろう。
供試ケーブルの1メートルにつきワイヤ2巻で巻かれたRS02のケーブル誘導磁界感受性試験では、ケーブルのまわりにワイヤがきつく巻き付いていた。EUTの感受性をモニタしながら、電源周波数の電流20アンペアを巻き付けたワイヤに流し、さらに感受性をモニタしつつ(10msと150nsのスパイクが規定できたであろう)200Vのスパイクを巻き付けたワイヤに印加した。RS02試験のケースでは巻き付けたワイヤをEUTのシャーシ周りに配置し、同じ誘導磁界感受性試験が達成されている。
RS03の電界試験は今日のものとほぼ同様だが、妨害信号の変調は規定されていなかった。規格には、試験プランの一部として動作させる電磁環境を考慮するようにと記述されている。これを考慮することで、その際に使用されるさまざまな周波数帯域にAM、FM、パルス変調を追加することができたかもしれない。MIL-STD-461に規定されているように、試験レベルは1 V/m ~ 200 V/mの範囲でさまざまに変わる。
RS04の平行板方式は、周波数範囲14 kHz ~ 30 MHzでRS03の代替方法として使われていた。この構成では、RFアンプによって電圧を印加すると上下2枚の金属版の間に垂直偏波を生じる。この方式は、特に高い試験レベルの実行可能な試験法を提供するとともに、この周波数範囲での電磁界放射に関連する要素のコストとサイズをいくらか減らす助けとなる。
1993年、要求事項と適用可能性を定義するMIL-STD-461Dが、試験方法を記述するMIL-STD-462Dとともに発行された。この改訂には、いくつかの変更があった。
・特定の試験周波数範囲に基づく周波数ステップサイズの表。
・感受性試験において1秒の滞留時間を指定すること。RS101は走査速度表に記された速度の3倍の速さで走査を認める例外を示した。
・RS02の誘導磁気試験とRS04の平行板方式は削除された。
・磁気放射ループ配線は、適用された電流1アンペアつき9.5 ×107 pTを発生するよう変更された。放射ループの性能を検証するため、関連のループ・センサが定義された。
・電波無響室の仕様は、電波吸収体の性能定義とともに規定された。規格番号の付け方が変わり、磁界試験がRS101、電界試験がRS103となった。
・RS101の試験周波数範囲は、30 Hz ~ 100 kHzに変わった。
・RS103の試験周波数範囲は10 kHz ~ 40 GHz(入手した仕様が40 GHzを要求していない限り18GHz)に変更された。
・RS103試験は、調達庁(procuring agency)によって指定されていない限り、受信機に接続されているアンテナの同調周波数を使用できない。
【1999年の改訂「E」版で取り入れられた変更】
・周波数ステップ滞留時間は最低3秒に延び、必要な場合はEUT応答時間によって滞留時間を延ばせるようになった。
・周波数ステップサイズの表は、試験周波数範囲のあちこちで変わった。
・RS101にはヘルムホルツを使用する代替手順が導入された。
・RS103の2 MHz未満は要求事項から削除された。
・RS103の代替手順としてリパブレーション・チャンバのステップ回転法(mode tuned method)が認められた。
・受信機に接続されているアンテナの同調周波数のRS103の試験レベルは、関連アプリケーションではRE102の限度値より20 dB上に変更になった。
【2007年の改訂「F」版で取り入れられた変更】
・周波数ステップサイズの表は、より高い試験周波数範囲で変更された。
・RS101の走査速度は標準の3倍であったが、標準速度を使うようになった。
・受信機に接続されているアンテナの同調周波数で、RS103試験は水上艦と潜水艦を除いて適用できなくなった。受信機の同調周波数の試験レベルはないので、標準レベルは感度を下げる形で感受性を生じることが多いと考えられていた。
2015年に発行された改訂「G」版は、現行規格ではRS101とRS103の試験手法に関する以下の詳細な議論のベースとして使われている。
著者紹介
Steven G. Ferguson氏はCompliance Direction, LLCのチーフコンサルタントで、試験とデバイス評価の分野で40年以上の経験がある。試験方法の指導にも20年以上のキャリアがあり、EMC、製品安全、環境試験方法が専門。MILSTD-461、MIL-STD-810、MIL-STD 704/1275/1399、CE Marking について豊富な知識を持ち、試験所運営や製造会社の設計担当、試験手順の開発、試験実施の経験も生かして規制適合に幅広く対応している。EMC はじめEMI/EMC適合についてオンラインまたは顧客先での数多くのトレーニングコースを担当しており、対象は原子力施設、構造上のシールド、MIL-STD-461試験など幅広い。iNARTE認定EMCエンジニア。
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