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スタック基準設計が米国エネルギー省(DoE) の次世代電力密度目標を上回る

 電力および先進材料の世界的トップ企業Mersen社は、高性能3相SiCおよびIGBT電力スタック基準を2機種、設計・開発するためAgileSwitch社とFTCAP社と提携した。SiC基準のデモ製品は、SiC 150 kVAの頑丈な電気自動車(EV)インバータ用として、米国エネルギー省(DoE)2020ロードマップを上回る電力密度値16kW/LのWolfspeed SiCを使って設計されている。IGBT基準のデモ製品は、Infineon Industrial Power Partner Network(IPPN)のフレーム内で設計され、Infineon社の.XT技術で電力供給し、電気エネルギー蓄積 (EES)IGBT5 ※1 用途を目標にしている。Silicon IGBT5 .XT 500kVAのデモ製品は、25kW/Lを達成した。
 .XTまたはSiC MOSFETを用いたInfineon社のPrimePACK ™IGBT5のような電力モジュール新世代は、同じ基板面積内でも強化された電力密度がある。この付加価値が、結果として全体のシステム効率を増加できるインバータや電力スタック設計者に対して明らかにプラスになる一方で、冷却、バスバー、ゲート・ドライブ、コンデンサなどにはいくつかの新しい課題をもたらす。基本的に、こういった周辺機器が、全体的なインバータのサイズと、究極的には最終的な電力密度値を定める。
 Mersen社の戦略マーケティング部長のPhilippe Roussel博士は「Mersen社、Infineon社、AgileSwitch社、FTCAP社は、当社顧客であるインバータ・メーカーに提供できる最新の革新技術を結集した」と話す。この統合化されたアーキテクチャ・アプローチにより、インバータ設計者は個々の部品を選ぶ際に、時間を節約して混乱を避けることができ、特定の用途に最適化された予備設計ソリューションから多くの利益が得られる。電力モジュール、バスバー、冷却、ゲート・ドライブ、コンデンサについては、システムの電気的、機械的、熱的な課題に応えるのに今やワンステップで同時に最適な設計ができる。Mersen社の方針は「設計は部品ではなく機能によって決まる」である。
 Silicon基準設計は、AgileSwitch PPEMシリーズにより駆動する3つのInfineon社製IGBT5 .XT FF1200R12IE5モジュールに基づいている。このセットアップによって700 VDC/850 ARMSのコンバータが8kHzで動作可能になり、最高750 kVAまで供給できる。SiC基準設計は、AgileSwitch’ s 62EM1 Gate Driverを用いて20 kHzまでスイッチング速度をアップでき、特許取得のAugmented Switchingおよび最新の故障監視を備えたWolfspeed CAS300M12BM2モジュール3個に電源供給される3相700 VDC/200 ARMS水冷式コンバータに基づいて作られている。SiCとIGBT両方の設計用に、特注のDC リンクのキャパシタ・バンク(IGBT用700 V/3,500 μF、SiC用1,000 V/760 μF) が開発され、省スペース化とヒートシンク底面への熱伝導の最適化が実現した。高温、低いインダクタンスが特徴のMersen社製ACとDCの積層バスバーは、リプル電流によって誘発される表皮効果を最小にするよう設計されている。同社の高性能アルミ蒸着低温メッキプレートはIGBT では10 kW、SiCでは3 kWまでの損失を放熱することにより、電力モジュールのジャンクション温度(Tj)を130 ℃より低く保つ。ピーク効率は、両者とも98%を超えている。
 個別の部品を購入すれば基準設計のサポートを受けることができ、さらにMersen社による組み立てサービスも利用できる。上述のデモ製品は、3月末に米国フロリダ州Tampaで開催されるAPEC2017のMersen社ブースで展示される予定。
 詳細はMarsen社のウェブへ。(2017/03/08)

[※訳者注]
1.IGBT5とは第5世代IGBT:(Insulated Gate Bipolar Transistor:半導体素子)、.XTは革新的なアッセンブリの組み合せ技術のこと。