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シャコ類からヒントを得た新種の光センサ

March, 17, 2021, Raleigh--シャコ類の眼からヒントを得てNC Stateの研究チームは、新しい種類の光センサを開発した。これはスマートフォンに組みこめる程度に小さいが、ハイパースペクトルおよび偏光イメージングが可能である。

「多くの人工知能(AI)プログラムは、データリッチハイパースペクトルおよび偏光画像を利用できるが、その画像を捉えるために必要な装置は現状では、いささか大きい。われわれの研究は、それをもっと小さく使いやすくした。さらに、そのAI機能が天文学からバイオメディカルまでの分野で実を結ぶようになる」と論文の共著者、NC State電気コンピュータ工学准教授、Michael Kudenovはコメントしている。

この研究との関連では、ハイパースペクトルイメージングは、光の可視波長をもっと狭帯域に分解できる技術と言う意味である。人の眼は、色のこうした微妙な変動を区別することができないが、コンピュータはできる。ハイパースペクトルイメージングは、画像の物質の化学成分判定などで価値がある。

偏光分析法とは、光の偏光計測である。これは、画像の物質の表面幾何構造を判定するために使える。例えば、表面が粗いか滑らかであるか。また、光源に対する表面の角度はどうであるか。

光は、よく知られているように説明が難しい。光が粒子と波の両方だからできる。光の波が点Aから点Bに動くと、それら二点間の経路は光の方向になる。光を粒子と考えると、点Aから点Bへの直線で移動する。しかし光は、波のように振動する電磁場でもある。光が点Aから点Bに伝搬する時に、その波を上下に、あるいは左右に揺れる波と考えると、偏光は、その経路に沿った波の方向の計測である。

ハイパースペクトルおよび偏光画像を捉えることができる大きなデバイスはあるが、スマートフォンサイズのイメージング技術は、重大な課題に直面していた。

例えば、携帯電話カメラ技術の設計は、最終画像では、様々な光波長の微妙なアライメント誤差となる。その結果は、家族写真を撮るにはあまり重要ではないか、科学画像の分析では問題になる。また、その問題は、カメラが、ハイパースペクトル技術の場合のように、もっと多くの色を捉える際には悪化する。

新しい光センサの開発者は、シャコ類の眼からヒントを得た。シャコ類は、微妙な色のグラデーションを正確に捉えることができる。したがって、チームはシャコ類の眼を真似る有機電子センサを作製した。それは、口脚類触発マルチスペクトル偏光感度(SIMPOL)と言う。

研究チームは、プロトタイプSIMPOLセンサを開発した。これは、同時に4つのスペクトルチャネルと3つの偏光チャネルを記録できる。比較すると、スマートフォンに使用されているCCDには、3つのスペクトルイメージングセンサしか装備していない。これらは、赤、緑、青を検出し、偏光チャネルは2つである。加えて、SIMPOLプロトタイプは、4色チャネルと3偏光チャネルを一点で計測できる、一方CCDsは複数点に広がるイメージングセンサに依存する。

概念実証にすぎないが、研究チームは、モデリングシミュレーションを使い、その設計が、15までの空間的に記録されたスペクトルチャネルのセンシングが可能なディテクタ実現に使えることを確認した。

「SIMPOLカラーチャネルは、一般的なイメージングセンサよりも10倍狭いスペクトル特性を区別できる。つまり、10倍高精度であるということだ」とKudenovは話している。

「われわれの研究は、ハイパースペクトルと偏光画像を同時に捉えることができる、小さく、効率的なセンサが作製可能であることを実証している」と論文の共著者、Brendan O’Connorは言う。「これは、新種の有機電子センシング技術に扉を開くと考えている」。
論文は、Science Advancesに発表された。

(詳細は、https://news.ncsu.edu)