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MIT、植物ベースのセンサ、土壌のヒ素濃度モニタ

January, 27, 2021, Cambridge--生きた植物の葉に埋め込まれたナノスケールデバイスは、毒性重金属をリアルタイム検出できる。

シンガポール-MIT研究・技術アライアンス(SMART)の精密農業のための破壊的で持続可能技術(DiSTAP)研究グループの研究者、シンガポールMIT研究エンタプライズは、新タイプの植物ナノバイオニック光センサを設計した。これは、地下環境における強い毒性のヒ素濃度をリアルタイムに検出、モニタできる。この開発は、環境のヒ素を計測するために利用されている従来法に対して大きな利点を提供し、食品の安全を守るために環境モニタリングおよび農業アプリケーションの両方にとって重要になる。ヒ素は、米、野菜、茶葉など多くの一般的な農産物の汚染物だからである。

この新しいアプローチは、“Plant Nanobionic Sensors for Arsenic Detection,” のタイトルでAdvanced Materialsに発表された。

ヒ素とその化合物は、人やエコシステムにとって深刻な脅威である。人が長期にヒ素にさらされると、広い範囲で健康への有害な影響が出る、心臓麻痺、糖尿病、出生異常、重度の皮膚病変、それに皮膚、膀胱、肺を含む数多くのガン。採鉱や溶錬など人の活動の結果として土壌中のヒ素レベルが上昇すると、植物にも害が出る、成長を阻害し、かなりの作物損失になる。

食用作物が、土壌からヒ素を吸収するので、人が消費する食物や生産物の汚染につながる。地下環境のヒ素は、地下水や他の地下水源も汚染する。それを長期的に消費すると重度の健康問題になる。したがって、正確、効率的で、導入しやすいヒ素センサの開発は、農産業を守りと広範な環境の安全のために重要である。

新しい光学ナノセンサは、ヒ素を検出すると蛍光強度の変化を示す。植物の組織に埋め込まれ、植物には有害な影響はないので、これらのセンサは、植物が土壌から取り入れるヒ素の内的ダイナミクスをモニタする非破壊的方法となる。生きた植物に光ナノセンサをこのように組みこむことによって、植物を自然環境から自力でヒ素を検出するように変えることができ、現行の従来法の時間と装置集約的なヒ素サンプリング法から大幅なアップグレードを示すとができる。

「われわれの植物ベースナノセンサは、この種のもので初であるばかりか、地下環境のヒ素濃度計測の従来法と比較して著しい優位性が際立っている。時間、装置、マンパワーが少なくてすむ」と、論文の主筆、院生Tedrick Thomas Salim Lewはコメントしている。「このイノベーションは、最終的には、農産業および、それ以外で広く利用されるとわれわれは見ている」。

米やほうれん草のヒ素を検出するだけでなくチームは、シダ類、ヒ素を過度に蓄積することがあるオオバノイノモトソウ(Ptris Cretica)も使った。このシダ類は、高濃度のヒ素を蓄積し、耐性があり、有害作用はない。このシダ類を使い、チームは、超高感度植物ベースヒ素ディテクタを設計した。これは、0.2 ppbの極めて低濃度のヒ素を検出することができる。一方、ヒ素ディテクタの規制限界は、10ppbである。特に、新しいナノセンサは、他の種類の植物にも組込可能である。研究チームによると、これは生きた植物ベースのヒ素センサ実証の初の成功例である。また、農業研究(例えば、食品安全のために食用作物に取り込まれたヒ素のモニタ)および一般環境モニタリングの両方で非常に有用であることを証明する画期的な進歩である。

以前、標準的なヒ素濃度計測法に含まれていたのは、定期的なフィールドサンプリング、植物組織蒸解、抽出、質量分光法を使う分析である。これらの方法は、時間がかかり、幅広いサンプル処理を必要とし、大きくて高価な計測器の利用が必要になることがある。新しいアプローチは、ナノ粒子センサと植物の自然力とを結合して、根から分析物を効率的に抽出し、それらをトランスポートする。これにより、ポータブル、安価なエレクトロニクス、例えば、スマホカメラと同種のCCDを搭載したポータブルラズベリパイを利用して、生きた植物のヒ素取込をリアルタイム検出できる。

(詳細は、https://news.mit.edu)