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大阪大学、半導体デバイス性能予測シミュレータの超高速化に成功

December 16, 2013, 大阪--大阪大学大学院工学研究科、森伸也准教授とミリニコフ・ゲナディ特任研究員の研究グループは、半導体デバイスの特性を原子レベルから計算できる新しいデバイスシミュレーターを開発した。
現在の半導体集積回路の技術的・経済的な限界を打破するため、世界中で新しい構造、新しい材料のデバイスが数多く提案されている。その中から、実用に適した構造や材料を効率的に見つけ出すには、性能を予測するシミュレーターが必要。ナノメートルサイズでは、量子論的な効果が性能に大きく影響するため、その効果を取り入れたシミュレーション技術の開発が盛んに行われているが、現在提案されているいずれの方法も複雑な計算に多くの時間がかかるため、回路設計に応用することは困難である。
今回研究グループは、ある特定のエネルギーの電子についてのみ計算し、さらに原子配置が乱れる部分は乱れの大きさを表すパラメータ1個のみをばらつき計算に使用することで高速化する新しい計算モデルを開発した。その結果、従来1年以上かかるような原子論に基づく半導体集積回路の性能予測が、通常のパソコン1台の能力で数日あれば計算可能になった。必要な計算量は従来の1000分の1以下に削減されている。
この成果は、将来のナノワイヤ(電気を通すナノレベルの細線)やナノピラー(柱上のナノ構造)などの新しい構造のナノデバイスから構成される集積回路の設計に応用できると期待されるほか、さまざまなシミュレーション結果はさらに微細化して行く次世代の半導体集積回路の新たな設計指針の構築に貢献するものと期待される。
開発したシミュレータを用いると、直径4nm、ゲート長10nm、全長30nmのシリコンナノワイヤートランジスタ1000個の伝達特性を、通常のパソコン1台を用いて、数日でシミュレーション可能。この計算には従来1年以上の計算時間が必要となるため、現実的ではないと考えられてきた。さらに、パソコンを複数台用いる並列計算で、より短時間でばらつき解析が可能であり、また、スーパーコンピューターを利用すれば、さらに多くのサンプルのシミュレーションも可能。
この高速化により、ばらつきを抑制できるデバイス構造・材料の探索や、原子論に基づく電気的特性シミュレーターの集積回路設計への応用が進むものと期待される。
研究グループは今後、より現実的なナノ構造のデバイスについてのシミュレーションと実験データとの比較を行い、具体的な特性やシミュレーションの正しさを明らかにしていく。また、トランジスタ単体の性能予測だけでなく、複数のトランジスタから構成される電子回路としての性能を予測する回路シミュレータや、電流によるトランジスター、配線の発熱を予測するシミュレータなどとデータを連携することで、原子レベルから電子回路レベルまでの統合的シミュレータの開発を行う。
これらの結果は、さらに微細化して行く次世代の半導体集積デバイスの新たな設計指針の構築に貢献するものと期待される。
この研究成果は、科学技術振興機構(JST)課題達成型基礎研究の一環。

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