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ナノメートル・スケールトランジスタ動作中温度を正確に測定

December 11, 2013, 東京--慶應義塾大学理工学部電子工学科の内田建教授の研究チームは、産業技術総合研究所(産総研)ナノエレクトロニクス研究部門と共同で様々な構造の微細トランジスタにおける動作中温度の正確な測定に成功。ナノメートル・スケールの素子では動作中の温度上昇が無視できないことを見いだし、温度を下げるための素子設計指針を開発した。
この研究成果によって、次世代のPCやスマートフォンなどに用いられる半導体集積回路の高信頼性化が期待される。
産総研ナノエレクトロニクス研究部門は、スーパークリーンルーム運営室の支援を受けて、ゲート長40nm程度の先端トランジスタを作製。産総研で作製した素子は、従来構造のバルクトランジスタ(バルク基板上に作製したトランジスタ)に加えて、6nmの極薄膜BOX層を持つSOI基板上に作製されたSOIトランジスタも含んでいる。トランジスタの動作中の温度を、4端子ゲート法という手法によって測定した。
慶應義塾大学内田教授のグループは、温度変化に伴う抵抗変化の大きなニッケルシリサイド(NiSi)を多結晶(Poly)シリコンに貼り付けた4端子ゲート電極構造を採用し、高精度の抵抗評価技術と組み合わせることで、ナノメートル・スケールのトランジスタにおいて、これまで実現できていなかった非常に高い精度で温度を測定することに成功した。
過去の研究から、SOIトランジスタの動作時温度はBOX層の薄膜化によって低減できることが示唆されていた。この研究ではさまざまなBOX膜厚のSOIトランジスタの温度を測定し、BOX層薄膜化によって動作時温度は標準的な動作条件において60℃程度下がるものの、40℃程度の温度上昇は依然存在することを明らかにした。さらに、局所温度の上がりやすさに相当するパラメータであるトランジスタの熱抵抗は、基板全体の温度に依存することを初めて見いだした。このことは、これまで考えられていたトランジスタの熱抵抗が基板全体の温度に依存しないとする局所温度上昇のモデルでは、トランジスタの温度を正しく評価できないことを示している。
また、バルクトランジスタは、現在量産されているトランジスタの主流の構造であるが、このようなトランジスタではチャネル近傍の局所的な温度上昇は無視できると考えられており、チャネル近傍の温度は上昇しないという前提で集積回路の設計は行われてきた。しかし正確に温度を測定することにより、特徴的サイズが40 nm程度のトランジスタでは標準的な動作条件においてチャネル近傍の温度が20℃以上も上昇していることが初めて見いだされた。さらに、バルクトランジスタの局所的な温度上昇が、チャネル領域への不純物イオン注入によるシリコンの熱抵抗の上昇に起因することを示した。このことから、従来は電気的な条件からのみ最適化されていた不純物イオン濃度を、熱的な条件も考慮して最適化する必要があることが分かった。
今回の研究では、ナノメートル・スケールの先端トランジスタの温度を正確に測定することに成功し、従来は局所的な温度上昇が無いと考えられていた薄膜BOXのSOIトランジスタやバルクトランジスタにおいても、温度上昇は無視できないことを示した。また、トランジスタの動作時温度を低減するために、不純物濃度の熱的観点からの最適化が重要であることを示した。これは、次世代集積回路において高性能と高信頼性を両立する方向を示すものである。

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