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固体中の原子の超高速運動を10兆分の1秒単位で制御し画像化する新しい光技術

November 20, 2013, 大阪--自然科学研究機構分子科学研究所の大森 賢治教授らは、固体の中の原子が高速で2次元運動する様子を、10兆分の1秒単位で制御し画像化する新しい光技術を開発した。
従来の電子デバイスよりも数千倍速いスイッチングや1億倍速い論理演算を可能にする光デバイスの開発を目指して、固体の電気伝導性や磁性などを光で制御する試みが世界中で進んでいる。これらの物理的な性質は原子の動きに敏感なため、固体中の原子運動を光で制御する研究が盛んに行われるようになった。このような研究では、原子運動を自由な方向に制御しそれを評価するための画像化が重要であるが、これまでは主に直線運動(1次元)の制御しか行われてこなかった。また、固体の中の原子運動を画像化するためには、X線や電子ビームを照射する大掛かりな実験装置が必要である上に、1兆分の1秒以下の高速現象を見ることは極めて困難だった。
今回研究グループは、「あらゆる物体の2次元運動は互いに垂直な2つの1次元運動に分解できる」というシンプルで普遍的な原理に着目し、この原理を固体中の原子運動に適用した。互いに垂直な2つの方向の原子運動を10兆分の1秒だけ光る特殊な赤外レーザパルスでそれぞれ独立に制御することによって2次元運動を制御し、固体表面からの光反射を測定する簡便な方法を用いて、この2次元運動を10兆分の1秒単位で画像化することに成功した。
この成果は、将来の超高速光デバイスの開発につながる基盤技術として期待されるほか、超伝導性や磁性など固体の物理的な性質の起源を探求するための基礎技術としても役立つと期待される。
固体中の原子の振動運動の周期(通常、数兆分の1秒)よりも短い時間幅のレーザパルスを固体に照射すると、固体を構成する原子が集団的に振動する状態を作り出すことができる。この集団的な振動運動はコヒーレントフォノンと呼ばれている。
研究では、ビスマス原子の結晶を実験対象として用いた。ビスマス結晶には、隣り合った原子が縦方向に振動するA1gと横方向に振動するEgという互いに垂直な2種類のコヒーレントフォノンがあり、A1gは3兆分の1秒、Egは2兆分の1秒というそれぞれ異なった周期で振動する。まず、これらと同程度の周期で強度が振動するような波長800nmの特殊な赤外レーザパルス(ポンプパルス)を合成し、これをビスマス結晶に照射した。このレーザパルスは、5兆分の1秒の時間幅内で徐々に波長が変化するような2つのレーザパルス(サブパルス)を独自の装置で重ね合わせて作った。
これら2つのサブパルスのタイミングを1000兆分の1秒以下の極限精度で調節することによってポンプパルスの強度振動を微妙に調節することができ、これによって互いに垂直なA1gとEgの原子振動の振幅を各々独立に操作できることがわかった。
次に、別のレーザパルス(プローブパルス)をビスマス結晶の表面に照射し、反射光の強度が10兆分の1秒単位で時間変化する様子を観測。この結果を、密度汎関数法と呼ばれる量子力学の理論で縦方向と横方向の原子の空間位置に変換し、2次元平面にプロットした。
研究チームは、ポンプパルスを構成する2つのサブパルスのタイミングを極限精度で調節することによって固体内の原子の2次元運動を制御し、光反射を測定する簡便な方法を用いて10兆分の1秒単位で画像化することに、世界で初めて成功した。
開発した制御・画像化手法は、「あらゆる物体の2次元運動は互いに垂直な2つの1次元運動に分解できる」というシンプル、かつ普遍的な原理に基づいているため、あらゆる固体に適用することが可能。従って、将来の光固体デバイスを開発するための汎用的な基盤技術として期待される。また、固体の超伝導性や磁性などの物理的な機能性が、どのように原子運動と関連しているのかを探求するための実験手法としても役立つことが期待されている。

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