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NICT、検出効率80%以上の「超伝導ナノワイヤ単一光子検出器」を開発

November 7, 2013, 東京--情報通信研究機構(NICT)は、 通信波長帯でシステム検出効率 80%以上(従来の約3倍)という極めて高い光感度を持つ「超伝導ナノワイヤ単一光子検出器(SSPD)」の開発に成功した。
今回開発したSSPDは、高検出効率に加え、高計数率、低ノイズ(低暗計数率)、低ジッタという特長を兼ね備えており、量子暗号通信の通信可能距離の大幅な改善などに役立つと考えられる。また、このSSPDは、液体ヘリウムを必要としない小型の機械式冷凍機で冷却できるため、長時間の連続使用が可能。さらに、光キャビティ構造の最適化により、幅広い波長帯域で高い検出効率を実現できるため、現在広く利用されているアバランシェ・フォトダイオード(APD)よりも更に高性能な光子検出器として、バイオ・医療分野をはじめ幅広い分野での利用が期待される。
今回NICTが新たに開発したSSPDは、従来のおよそ3倍の検出効率80%を達成した。これは、ダブルサイドキャビティと呼ばれる構造を採用し、光を超伝導ナノワイヤ近傍に閉じこめることで実現。基板材料を変更したことで超伝導ナノワイヤの特性均一性が改善したことも、今回の検出効率の向上に大きく寄与している。SSPDは、光子の高い検出効率に加え、40カウント/秒の低暗計数率という低ノイズ、68ピコ秒という低ジッタも実現した。
さらに、ダブルサイドキャビティ構造では、超伝導ナノワイヤが素子全体に占める面積比率(フィリングファクタ)を従来の半分以下にしても、光吸収効率に大きな低下がないことを今回新たに見いだした。フィリングファクタを低下させることでより高速な光検出応答が可能となり、高検出効率と従来の2.8倍に相当する70MHz (光子検出7,000万個/秒)の最大計数率を実現することができた。今回開発したSSPDは、InGaAs APDに対して1,440倍もの優位性を示している。また、高価かつ取扱いが難しい液体ヘリウムを必要としない、小型機械式冷凍機で冷却できるため、長時間の連続運転も可能。
今回、通信波長帯(1,550nm)で80%以上の検出効率を達成したが、光子のエネルギーが大きい短波長領域ほど高い検出効率を達成する上で有利となる。キャビティ構造の最適化により、1ミクロン(1,000 nm)以下の波長領域においても、現在広く使われているAPD等の光子検出器の性能を大きく凌駕できると考えられる。これまでは量子暗号通信での利用が中心だったが、今後、こうした新たな波長領域における、量子光学、微弱光通信、レーザー測距技術、蛍光測定など様々な分野で、最も高性能な光子検出器としてSSPDが幅広く利用されることが期待される。

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