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外科感染症を減らす狭スペクトラムUV光

October 29, 2013, NY--米国では外科感染症で亡くなる患者が年間8200人に上る。コロンビア大学医療センター(CUMC)の研究者は、狭スペクトラムUV光で、人組織に損傷を与えることなくそのような感染症を飛躍的に減らせると提案している。
米国では毎年20万~30万人の患者が外科感染症に罹っている。研究チームの報告によると、これは30億ドル~100億ドルの医療費に相当する。手術創感染の患者は、そうでない患者と比べてICUで過ごす時間が60%多くなり、再入院の比率は5倍、死亡率は2倍、入院期間も長くなり、医療コストは約2倍になる。
標準的な殺菌灯(200~400nm)が細菌死滅に極めて効果的であることは以前から知られており、手術用機器の消毒にも用いられている。
「ただ、このUV光は人組織にも有害であり、皮膚癌や白内障を引き起こす」と研究リーダー、David J. Brenner, PhD(放射線生物物理学、CUMC放射線研究センターディレクタ)は指摘する。
Dr. Brennerの研究チームは、UV狭スペクトラム(207nm)が、人組織に損傷を与えることなくバクテリアを死滅させるのではないかとの仮説を立てた。この波長のUV光はタンパク質による吸収が強いので、2つの理由で安全性が期待できる。全ての細胞段階で、人細胞の核に到達することはなく、組織レベルでは皮膚上皮や眼水晶体の感受性細胞に届かない。しかし、バクテリアは人細胞よりも遙かに小さいのでUV光はそのDNAに到達できる。「このことの意味は、207nmの光を人の皮膚や眼に照射しても、生物学的な損傷はないということだ。しかし手術創傷に付着した空中浮遊の細菌は殺せる」とDr. Brennerは説明している。
この仮説をテストするために研究チームは、手術創感染の共通原因、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)バクテリアと人皮膚細胞を、207nmだけでUV光を発光するクリプトン臭素エキシマランプ(KrBr excilamp)と標準的な殺菌UVランプに晒した。
研究チームは、207nm UV光が、従来のUVランプと同様にMRSAバクテリア死滅に効果があることを確認した。しかし、207nm光は標準的なUV光と比べると、人の皮膚細胞に対する害は1000倍少ないという結果が得られた。
別の実験では、2つのUVランプを人の皮膚の標準的な組織培養モデル(表皮と真皮)でテストした。標準的なUVランプの照射は、表皮に広範な前癌病変を起こしたが、同レベルの207nm光では起こらなかった。
「これまでの結果は、207nm UV光は感染予防措置に効果的な追加となり、しかもスタッフや患者に保護装置は不要だ。手術創感染、特に極めて一般的になっている薬物耐性のあるバクテリア種に関しては、感染を減らすあらゆるツールが必要になっている」とDr. Brennerは説明している。
同氏によると、手術創感染の主要ルートは空気である。「無菌を促進するあらゆる可能な努力にもかかわらず、MRSAや他のバクテリアは手術中に傷口に雨のように降り注ぐ。もしこのUVランプが手術中に傷口に連続的に照射されているなら、バクテリアは傷口にたどり着くと同時に殺菌されることになる」。エキシマランプとして知られるこのランプは、「小型、頑丈、安価、長寿命である」と研究チームはコメントしている。
(詳細は、 cumc.columbia.edu)

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