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NTTとNII、量子コンピュータを理論的に統合評価する方法を確立

October 11, 2013, 東京--情報・システム研究機構 国立情報学研究所(NII)の根本香絵教授とその研究チームは、日本電信電話(NTT)物性科学基礎研究所と共同で、世界初となる量子コンピュータを理論的に統合評価する方法を開発した。
最近、量子コンピュータの基礎となる技術が、世界的に目覚ましい実験的成果を挙げている。研究グループは、現時点で最も有望な大規模量子コンピュータの方法である「誤り耐性(フォールトトレラント)量子コンピュータ」について、上層のアルゴリズムから下層の素子制御までのすべての技術レイヤを漏れなく統合するという、実際の動作の流れに従って理論的にアルゴリズムを解析し、量子コンピュータの性能を評価する方法を世界で初めて確立した。
またこの方法を用いて、実際にショアの素因数分解アルゴリズムを解析し、量子コンピュータのベンチマークの指針を示すことにより、量子コンピュータのパフォーマンスは、素子の完成度よりも、ソフトウエア的アプローチ(基本素子の配列、使い方、組み合わせ等)によって大きく変わることを明らかにした。
研究グループは、NIIが蓄積してきた量子コンピュータのアーキテクチャに関する知見とNTTが有する量子素子に関する知見を生かして、大規模な誤り耐性量子コンピュータにおける構成素子からアルゴリズムまでの技術レイヤを統合し、量子コンピュータの性能評価手法を世界で初めて確立した。
性能評価の結果から、量子コンピュータの性能は、素子の完成度よりも、基本素子の配列、使い方、組み合わせといったソフトウエア的アプローチに依存することが判明した。
この手法により、量子コンピュータの統一的な設計指針の策定が可能になり、大規模な量子コンピュータの実現に向けてとるべき指針が明らかになった。

各技術レイヤとその統合(NII、NTT):
最下層の構成素子から最上層のアルゴリズムまで、新たに導入すべきレイヤをも含めて特定し、大規模な誤り耐性量子コンピュータに不可欠なすべてのステップを明らかにした。
技術レイヤの特定と統合は、構成素子に光モジュールを採用して行った。構成素子である「光モジュール」は、「光と量子ビット(原子や固体中の2準位系)」から成り、光と量子ビットの合成系を制御することで、エンタングルメント(量子もつれ)を生成する素子。この素子を3次元に規則的に配置し、「光モジュールネットワーク」を構成。この素子のネットワークに、「光モジュール上のスケジュール」で決められた通りに光子を送り込むことで、3次元の格子状にエンタングルした光子列が生成される。この光子列は3次元トポロジカル量子計算のリソースで、一定の規則に従って光子を測定することで、「誤り訂正符号により保護された量子ビット」(ロジカル量子ビット)上で量子計算を進めることができるようになる。
「光モジュールネットワーク」上に割り当てられたロジカル量子ビットは誤り訂正が可能だが、量子計算全体に誤り耐性を持たせるためには、誤り耐性のあるゲートの実装が必要。誤り耐性ゲートの実行ができるよう、量子コンピュータの「リソース・アロケーション」を決めてハードウエアのリソースを配分する。誤り耐性のあるゲートの種類はごく限られているため、アルゴリズムからユニバーサル・ゲートセットへの分解により得られる「量子回路」をさらに、誤り耐性のあるゲートセットへ分解して、「誤り耐性のある量子回路」を得る。ここでさらに、ハードウエアのもつ制限を考慮してゲートの「スケジューリング」を行うことで、実行可能なゲート列が生成される。
各技術レイヤのリストは、他のスケーラブルな量子コンピュータの実装方式へも適用でき、実行可能性のチェックリストとして機能する他、リソースやパフォーマンスのベンチマークへ用いることができる。

リソース・パフォーマンス評価(NII):
素子の技術や量子誤り訂正符号の理論はこれまでそれぞれ独立したテーマとして研究されてきた。それらの技術が、統合的な視点から全体を形作るための各レイヤとして特定されたことにより、実装しようとするアルゴリズムが、各素子に対してどのような振る舞いを具体的に要求しているのか書き下すことが可能となった。これにより、量子コンピュータのリソースと性能を評価できるようになった。
ショアの因数分解について量子コンピュータのパフォーマンスとリソースについて数値的に解析した。 
量子コンピュータのパフォーマンスは、素子の完成度の追及よりも、オペレ―ションをも含めたソフトウエアの工夫による高速化の方が有効であることが世界で初めてわかり、大規模な量子コンピュータを実現する上でのソフトウエアの重要性が示された。これは、ソフトウエアを改善すれば、実現すべき素子の技術レベルの低減化も可能であることを示唆している。素子開発を行う実験チームへの新たな指針としても、大いに役立つものと言える。

今後は、量子コンピュータの実現に大きく貢献できることが期待される「ソフトウエア」という切り口からも、研究を進めていく予定。
そのため、NIIでは、先にリリースしたトポロジカル量子回路の最適化問題をゲーム化した『meQuanics』を用い、オープン・サイエンス的手法も取り入れて、研究を進めていく。また素子開発チームと連携し、随時フィードバックを行っていく予定。
またNTTでは、光と電子を強く相互作用させる光モジュールの実現に向けた研究にも取り組む予定。
(詳細は、 www.nii.ac.jp)

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