All about Photonics

Home > News > News Details

News Details ニュース詳細

産総研、新しい工業用X線非破壊検査法を提案

October 4, 2013, つくば--産業技術総合研究所(産総研)生産計測技術研究センタープロセス計測チーム 上原雅人 主任研究員と、東北大学多元物質科学研究所の百生敦教授、矢代航准教授は、半導体パッケージの封止材中の空隙(ボイド)など、従来のX線非破壊検査法では見えなかった内部欠陥がX線タルボ干渉法により観測できることを実証した。
金属を透過できるX線は工業製品の非破壊検査に用いられている。しかし、工業製品は金属の他、セラミックスや樹脂などX線吸収係数の大きく異なる材料で構成されており、従来のX線吸収像では、樹脂などのX線吸収係数の小さい部材の検査は難しい。一方、X線位相像では樹脂などでも十分なコントラストの像が得られるが、撮影には多くの場合、大型の放射光光源を必要とし、生産現場での利用に難があった。X線タルボ干渉法では、実験室用のX線源でもX線位相像を撮影できる。これまで医療用としての開発が先行していたが、産総研は、電子部品の欠陥観察への利用を提案して実験を行った。その結果、これまでのX線非破壊検査では見えなかった、樹脂などの内部の欠陥を観測できることが分かった。
今回用いた、X線タルボ干渉法による高感度X線位相撮像装置は、科学技術振興機構(JST)の先端計測分析技術・機器開発プログラムの一環として、百生教授の研究チームが開発し、東北大学に設置されたる。今回の研究成果は、同プログラムの枠組み「開発成果の活用・普及促進」の中で、東北大学に設置された高感度X線位相撮像装置を利用して得られた。

・X線タルボ干渉法によりICパッケージを撮影した結果:ICパッケージは素子、金属配線、電極の他、それらを外部から保護する封止材で構成されている。従来のX線非破壊検査法である(a)のX線吸収像では、金属配線や電極は見えるが、封止材の構造は全く見えない。一方、X線タルボ干渉法で得られた(b)のX線位相微分像では、封止材内部の多数のボイドが観察できた。このようなボイドは封止材の保護力を弱めると考えられるため、品質管理上、問題となるが、X線タルボ干渉法によって非破壊検査の高度化が可能になると考えられる。
・パワーモジュール模擬試料をX線タルボ干渉法によって撮影した結果:この試料は、アルミニウムの冷却板と窒化アルミニウムの絶縁板、シリコン基板を積層し、封止材で覆ったものである。あらかじめアルミニウムや封止材表面には傷を入れてある。これらの傷は(a)のX線吸収像では全く見えないが、(b)のX線位相微分像でははっきりと確認できた。また、試料内部のシリコン基板は(a)や(b)では全く確認できないが、(c)X線散乱像では確認できた。窒化アルミニウム内にあらかじめ入れておいたクラックも、(a)や(b)では全く見えなかったが、(c)のX線散乱像では明瞭に見ることができた。

X線タルボ干渉法によって電子部品を撮影した結果、これまでの非破壊検査法(X線吸収像)では全く見えなかった封止材内部のボイドや表面の傷、セラミックス絶縁体内部のクラックなどが、X線位相微分像やX線散乱像では観察できることが分かった。このような、電子部品として致命的な欠陥を実験室レベルのX線装置で撮影できたのは世界でも初めてである。X線タルボ干渉法は、X線位相微分像やX線散乱像を、従来のX線吸収像と同時に取得でき、小型のX線源でも撮影可能なので、生産現場でも使用できる工業用のX線装置として、非破壊検査の高度化に貢献することが期待される。
今後の予定について研究チームは、「さらに厚みのある製品でも検査ができるように、X線の更なる高エネルギー化とそれに対応できるX線格子の作製を行う。また、欠陥などの配置や形態を立体的に把握できるように、コンピューター断層撮影(CT)のような立体画像の構築などの研究を進め、より生産現場のニーズに応えた装置を開発する」としている。
(詳細は、 www.aist.go.jp)

製品一覧へ

関連記事

powered by weblio





辞書サイトweblioでLaser Focus World JAPANの記事の用語が検索できます。

TOPへ戻る

Copyright© 2011-2013 e.x.press Co., Ltd. All rights reserved.