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光電子分光法による固液界面での電気化学反応のその場追跡に成功

September 19, 2013, つくば--物質・材料研究機構(NIMS) ナノ材料科学環境拠点およびJSTの研究グループは、国際ナノアーキテクトニクス研究拠点および高輝度放射光ステーションと共同で、SPring-8の高エネルギーX線とシリコン薄膜窓を用いた新しい測定システムを開発し、従来、真空中でのみ測定が可能であったX線光電子分光法によって、液体と固体の界面における電気化学反応のその場追跡に世界で初めて成功した。
NIMSのナノ材料科学環境拠点(GREEN)電池分野の魚崎浩平コーディネーター、科学技術振興機構(JST)の増田卓也さきがけ研究者らのグループは、物質・材料研究機構 国際ナノアーキテクトニクス拠点(WPI-MANA)および高輝度放射光ステーションと共同で、SPring-8の高エネルギーX線とシリコン薄膜窓を用いた新しい測定システムを開発し、従来、真空中でのみ測定が可能であったX線光電子分光法(XPS)によって、液体と固体の界面における電気化学反応のその場追跡に世界で初めて成功した。
固液の界面は身近な蓄電池や燃料電池、太陽電池などのエネルギーデバイスにおいて、エネルギー変換や利用を担っている重要な場所。エネルギーの利用効率を極限までに高めようとする昨今の研究開発では、経験則に頼った材料開発から脱却し、戦略的に材料設計を可能とするような明確な評価手法が必要となってきた。このことから固液界面の反応の動的挙動を反応が起こっている環境(その場)で直接観察・計測する手法が渇望されていた。他方、X線光電子分光法は、物質にX線を照射し、表面に存在する元素から放出された光電子のエネルギーを分析することで、表面の元素の種類やその化学的な状態を評価することができる手法は、真空中で測定を行うことが不可欠であり、固液界面の反応を直接、その場で観測することはできなかった。
研究グループは、SPring-8の高輝度で高エネルギーなX線を独自に作成した厚さ15nmのシリコン薄膜窓を透過させることで、非真空中の固液界面の電気化学反応をその場で観測することに成功した。シリコン薄膜をX線と光電子を透過する窓、真空と液体を隔てる壁、電気化学反応用の電極として利用し、SPring-8の高輝度で高エネルギーなX線を用いることで、シリコン薄膜窓(固体)と液体の界面で放出された光電子を(薄膜を通して)真空側で検出する測定システムを開発。このシステムによって、水中で電位をかけることによってシリコン表面に酸化膜が成長する、という電気化学反応のその場観測に成功した。
この研究の成果によって、蓄電池や燃料電池といった主要なエネルギーデバイスの固液界面プロセスの解明が進むことが期待されるとともに、反応機構や既存材料の問題点を明らかにすることによって、電池電極や触媒材料といった重要な部位の開発や性能向上に役立つことが期待される。従来は困難であった界面の組成や状態の定量的な評価が可能となり、副反応や反応の生成物の特定によって電極や電解質の劣化の機構を解明することに役立つものと考えられる。また、従来よりX線光電子分光法は工業分野、医療分野などの材料設計開発に用いられており、これらの幅広い分野の界面反応が重要な役割を果たす幅広い現象の機構解明に役立つと期待される。
(詳細は、 www.nims.go.jp)

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