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従来の1/10の超低消費エネルギーでデータ伝送可能なレーザの開発に成功

May 30, 2013, 東京--日本電信電話(NTT)は、10Gbpsの信号を、世界で最も小さな消費エネルギーで伝送可能な超小型半導体レーザ(LEAPレーザ)の開発に成功した。1ビットのデータ転送に必要なエネルギーは従来の半導体レーザの1/10以下の5.5 フェムトジュール。
この技術を利用して、現在は電気配線を用いているマイクロプロセッサ間やマイクロプロセッサ内のデータ転送を光配線に置き換えれば、サーバやルータなどのIT機器で大きな消費電力を使っているマイクロプロセッサの消費電力を4割程度削減できる。
NTTは、これまでに、LEAPレーザを開発し、世界初の電流注入による室温環境(25℃~30℃)での連続的な動作(しきい値電流:390マイクロアンペア)に成功したが、実際に光技術をマイクロプロセッサ間のデータ転送等に適用するには、しきい値電流の削減と超低消費エネルギー動作の実現、及びIT機器内部の温度環境下(80℃)での動作が重要な課題となっていた。
NTT研究所では、しきい値電流の削減と超低消費エネルギー動作の実現のためにはレーザの漏れ電流の削減が重要であることを明らかにし、レーザと基板の間に電流ブロック層とフォトニック結晶の内部に電流ブロック用の溝を形成したLEAPレーザを作製した。これにより、半導体レーザとしては、世界で最も小さな4.8マイクロアンペアのしきい値電流を実現。さらに、レーザ活性層にアルミニウムを含む活性層を用いることで最高95℃までレーザ発振することを確認した。
さらに、10Gbpsの信号でレーザを変調した場合に、これまで面発光レーザで得られていた消費エネルギーの1/10以下の5.5フェムトジュールで1ビットのデータ伝送が可能なことを確認した。このことは、世界で初めてコンピュータコムに適用可能な半導体レーザが実現できたことを意味する。

技術のポイント
(1)活性層以外に流れる漏れ電流の削減
LEAPレーザはこれまで開発されてきた半導体レーザとは異なり基板と平行方向にpin接合を作製する。そのため様々な経路で電流が流れて漏れ電流が増加することから、今回、活性層に限定して電流が流れるように以下のように素子設計を工夫し、漏れ電流を大幅に削減した。
<1>フォトニック結晶下にバンドギャップの大きなInAlAs電流ブロック層を設け、基板を経由し た漏れ電流を削減
<2>共振器の光特性を損なわないように工夫して活性層の両側に溝を形成し、フォトニック結晶面内の漏れ電流を削減
(2)InGaAlAs活性層の適用
マイクロプロセッサの温度は80℃以上に達することが見込まれ、高温でのレーザ発振が必須。従来用いていたInGaAsP材料からInGaAlAs材料を活性層に使用して温度特性・変調特性を改善した。LEAPレーザのように波長程度の大きさの活性層をInGaAlAs材料で作製した場合は、アルミニウムの酸化の問題があり埋め込みは困難と思われてきたが、作製法の工夫により95℃までの発振と世界最高の変調効率を得ることに成功した。

今回の成果では、これまで基礎研究にとどまっていたフォトニック結晶レーザがマイクロプロセッサチップ内への光配線用光源として実用化できることを示した。今後の展開についてNTTは、「レーザ出力の増加や高い信頼性の確保などのマイクロプロセッサ間のデータ転送の実用化に向けた研究開発に取り組み、2016年を目途に本レーザの商用化を目指す。これによりマイクロプロセッサ間の大容量データ通信を低消費電力に実現できる。さらに、2022年頃にはマイクロプロセッサ内へ光配線技術を導入しマイクロプロセッサの消費電力を4割程度削減する。このためには、大規模な光集積回路を作製する技術の確立などが重要となる」と説明している。
(詳細は、英国科学雑誌「Nature Photonics」のオンライン速報版)


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