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NICT、量子を使い光信号を遠隔地点に増幅・再生

May 14, 2013, 東京--情報通信研究機構(NICT)は、ソウル国立大学と共同で、量子暗号などで使われる微弱な光信号を、遠く離れた地点に大きな信号として増幅して再生する新しい方法を考案し、その実証に成功した。
これは、受信側にあらかじめ大きな振幅を持つ「量子重ね合わせ状態」という特殊な光を用意しておき、そこへ送りたい光信号の情報を転写するもので、雑音の混入が避けられない従来の光増幅器とは異なり、無雑音の信号増幅が可能。量子暗号を長距離化できるほか、量子コンピュータの回路の構築にも使える新プロトコル。

量子増幅転送の仕組み
今回実証に成功した方式は、光信号の量子力学的性質を保ったまま、遠く離れた地点に大きな信号として増幅して再生するもので、「量子増幅転送」と呼んでいる。
受信側にあらかじめ大きな振幅を持つ「量子重ね合わせ状態」という特殊な光を用意しておき、その一部を分岐して光回線を介して送信者へ送り共有しておく。送信者は、この共有した光を送りたい信号と合波し、2つのビームの光子を検出して、その結果に応じて受信側で量子重ね合わせ状態を適切にフィルタリングし、信号の再生増幅を行う。
今回の実験では、高純度の量子重ね合わせ状態を生成・制御することにより、信号エネルギーの80%が失われる大きな損失を持つ光回線でも、無雑音のまま最大3倍まで増幅された信号を受信側に再生することができた。受信側で用意する量子重ね合わせ状態の振幅を更に大きくすることができれば、原理的に距離や増倍利得をいくらでも増やすことが可能。NICTは今回の成果について、「量子暗号の長距離化や量子通信の実現に大きな突破口を与えるものである」と説明している。
量子増幅転送は、光を用いた量子コンピュータのゲート機能の実現や回路内での信号増幅にも利用できる。特に、光量子コンピュータを受信機に組み込めば、光子あたり最大の情報量を取り出す量子デコーダを実現できるため、今回の成果は、究極的な低電力・大容量の量子通信に向けた研究にも大きな進展をもたらすと期待される。
今後についてNICTは、「光集積化技術を用いて実験系を更に小型化し、量子暗号の長距離化や量子受信機の研究開発に適用していく。最終的には、量子暗号、量子コンピュータ及び量子通信を光インフラの上でシステム統合するインターフェース技術の開発につなげていく」としている。
成果は、英国科学誌「Nature Photonics」2013年6月号(電子版: 英国時間5月12日(日)18:00)に掲載。


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