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産総研、光照射によるめっき薄膜の密着性向上法とパターニング法開発

March 28, 2013, つくば--産業技術総合研究所(産総研)ナノシステム研究部門ナノシステム計測グループ 堀内伸上級主任研究員の研究チームは、無電解めっきによりプラスチック基材上に形成した金属薄膜に高強度のパルス光を瞬間的に照射すると、基材にダメージを与えずにめっき膜の密着性を向上できることを見いだした。また、この技術によってめっき膜のパターニングも可能。
無電解めっきでは、基材の表面にあらかじめ触媒を固定化し、溶液中の金属イオンを化学的に還元することにより、金属薄膜を形成する。今回、触媒として、ポリマーで覆われた直径3 nmの均一な大きさの白金ナノ粒子が水中に安定して分散している白金コロイドを用いた。これにプラスチックなどの基材を浸すと、白金ナノ粒子が基材表面に均一に固定化される。その後、低濃度の過酸化水素と塩化金酸の混合水溶液に浸すと、白金ナノ粒子の触媒作用により、以下化学式のように過酸化水素水が塩化金酸を還元し、約100 nmの金めっき膜が得られる。

2HAuCl4+3H2O2→pt 2Au+3O2+8HCl

これまでは、めっき後に100~250 ℃(基材の特性により温度は異なる)で約30分加熱処理していた。これによりめっき膜の密着性が向上し、JIS K5600-5-6に準じたテープはく離試験では、はく離しない金めっき膜が形成される。このプロセスでは、表面粗化せず、めっき後に加熱処理を行って密着性を向上させることが特徴であり、同様の方法でパラジウムコロイドを触媒として銅めっき、ニッケルめっき、白金めっきが可能である。しかし、このような後加熱処理は、基材のそりや変形などの問題を引き起こす恐れがあり、また、10~30分の処理時間を要する。
今回、従来の加熱方法に替わる方法として高強度パルス光による後処理法を検討した。プラスチック基材上に成膜しためっき膜に、パルス光照射装置を用いて数百μs(マイクロ秒)のパルス光を照射すると、めっき膜とプラスチック基材の界面だけが瞬間的に加熱される。これによって、めっき薄膜の密着性が向上する一方で、加熱が瞬間的であるためプラスチック基材には、反りや変形などは生じない。
300 μs、1.21 J/cm2のパルス光を1回照射。密着性は向上し、テープはく離試験ではく離しない密着性が得られた。一方、より高いエネルギーのパルス光(例えば300 μs、 2.06 J/cm2)を1回照射すると、めっき膜は除去(エッチング)された。また、より低いエネルギーのパルス光照射では、密着性は向上せず、テープはく離試験により容易にはく離した。
パルス光照射によって配線などの金属パターンを形成できるかどうかを確認するため、所定パターンをPETフィルムにレーザプリンタで印刷したマスクパターンを金めっき膜の上に載せ300 μs、1.21 J/cm2のパルス光を1回照射。パターンによりマスクされた部分のめっき膜は、パルス光が照射されなかったため密着性が悪く、粘着テープを貼り付けて剥がすとこの部分がテープと一緒にはく離し、金の金属パターンが基材上に残った。一方、パルス光のエネルギーを高くすると、露光部のめっき膜がエッチングされ、逆のパターンが得られた。なお、このようなパルス光による密着性の向上、エッチングは種々のプラスチック基材でも可能であることを確認している。また、微細パターンをもつフォトマスクを用いれば、微細金属パターンの作製が可能。
今回開発した無電解めっきプロセスは、ほかの金属めっき膜やさまざまなプラスチック基材にも適用可能。この無電解めっき技術は被災地企業への技術移転を進めているところであり、今後は、被災地企業の要望を踏まえつつ、さまざまな金属とプラスチックの組み合わせに対する有効なパルス光照射条件の収集を行うとともに、用途展開を図っていく。また、今回見いだした現象は、めっき膜に特有であり、スパッタリングなどのほかの方法で成膜した金属膜では同様の効果が得られないため、この現象のメカニズム解明を進めていく予定。
(詳細は、www.aist.go.jp)

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