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NTT、MEMSによる超音波「レーザ」の実現に世界で初めて成功

March 26, 2013, 東京--日本電信電話(NTT)は、安定度の高い光を作り出す技術として広く用いられているレーザと類似の原理をMEMSに適用し、100万分の1以下という小さな周波数揺らぎしか持たない振動子の動作を実現した。
電子機器における基準交流信号を作り出す素子である水晶振動子は、昨今の通信・情報処理装置に不可欠の素子として広く用いられている。水晶振動子は薄膜の振動を用いて極めて高い周波数安定性を持つことが特徴で、電子機器の小型化に伴い、さらなる小型化・高周波数化が求められている。
NTTの研究所では、これまでMEMS(Microelectromechanical Systems)や、さらにそれを微細化したNEMS(Nanoelectromechanical Systems)の新しい応用技術の研究を進めてきたが、今回、MEMSに対してレーザに類似した原理を適用することにより、高い精度の超音波振動を生成する振動子の実現に成功。この成果は、将来的には水晶振動子より小型で高周波数かつ高精度な、半導体チップに集積可能な振動子への応用につながるものと期待される。
NTTの研究所が動作の実現に成功したMEMSの心臓部は、長さ250μm、幅85μm、厚さ1.4μm、髪の毛(約80μm)よりも細い小さな板バネ。今回、板バネ構造にレーザと類似の原理を適用することにより、周波数ゆらぎが100万分の1以下の極めて高い精度の振動を生成することに成功した。このような超音波に対する「レーザ」は、SASER(Sound Amplification by Stimulated Emission of Radiation)と呼ばれている。電気的に制御が可能なMEMSによるSASERを実現したのは、世界初。

技術のポイント
(1)原子の役割を持つ板バネ振動子
安定性の高い光源として用いられているレーザでは、原子が高いエネルギーの状態から低いエネルギーの状態に移る際のエネルギー差を使って光を放出する。今回、高品質の結晶成長技術と微細加工技術を駆使して作製したMEMSにおいて、高いエネルギーと低いエネルギーの二つの振動状態を用いることにより、レーザにおける原子の役割を板バネ振動子に持たせることに成功。
(2)圧電効果を用いた振動状態の精密制御
圧電効果を用いて振動状態を電気的に精密制御することにより、高いエネルギーの振動から低いエネルギーの振動に移る際のエネルギー差を、超音波振動として効率的に取り出す条件を見出すことに成功。これにより、高い安定性の超音波を実際に作り出せることを実証した。具体的には、幅70Hzという大きな周波数揺らぎの交流電圧を素子に加えたところ、ゆらぎが80 mHzしかない極めて周波数が安定した振動を確認した。このゆらぎは、振動周波数の200万分の1。この振動は交流電圧がある大きさを超えた時にのみ生じ、レーザ発振でみられるのと同様の「閾値特性」を示した。これらの特徴はレーザと類似しており、超音波に対して同様の動作を実現したことに相当する。
今回の原理実証実験では、通常の水晶振動子と同レベルの100万分の1以下の周波数精度を 2.5Kという低温において確認した。今後は、1GHz以上の高周波数動作や室温動作、より高い周波数安定性の実現に向けて、素子の小型化や最適化、詳細な発振特性の解析を進めていく予定。
(詳細は、米国の科学誌「フィジカル・レビュー・レターズ」誌電子版(3月18日付)に掲載)。

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