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世界最強X線レーザビーム、1μmの集光ビーム誕生

December 18, 2012, 東京--高輝度光科学研究センター、大阪大学、東京大学、理化学研究所の研究グループは、X線自由電子レーザ(XFEL:X-ray Free Electron Laser)施設SACLAにおいて、原子レベルの表面精度を持つ集光鏡により、世界で最も強いX線レーザのマイクロビームの実現に成功した。
SACLAで発生する高強度XFELを利用することで、例えば、タンパク質1分子の立体構造が瞬時に観察可能となる超高分解能の顕微鏡が将来開発できると期待されている。これを実現するためには、XFELをできるだけ多く集め、さらに超高強度な集光ビームを形成し、微小な観察対象を効率よく照明できる光学素子の開発が鍵となるが、強烈なXFELの照明下で安定して利用可能で、かつ集光効率の高い光学素子は今まで存在せず、超高強度集光ビームを生み出すことができなかった。
研究グループは、X線を1点に集めるために反射面の形状が楕円である集光鏡を開発。X線は原子サイズの極めて短い波長の光であるため、鏡表面に微小な凹凸があれば反射光は乱される。このため鏡には、原子レベルの凹凸にまで調整した滑らかな表面とX線を1点に集めるための形状が要求される。理化学研究所が開発したELID(Electrolytic In-process Dressing)研削法と、大阪大学が開発したEEM(Elastic Emission Machinig)加工法の2つの精密加工技術を駆使し、原子レベルの表面形状精度を持つ420mm長の大型鏡を作製した。開発したこの集光鏡をSACLAに適用し、理論通りの集光サイズ(横方向:0.95μm、縦方向:1.20μm)を有するXFELのマイクロビームの実現に成功した。これにより、XFELの光の密度を4万倍に向上させることができ、XFELによる世界で最も高い集光強度(6×1017W/cm2)を達成した。
今回実現した超高強度XFELマイクロビームを用いたイメージング手法により単細胞生物や複合タンパク質の構造解明のための研究が既に始まっている。また、これを利用することで、将来、原子分解能でタンパク質の立体構造の時間変化をスナップショット撮影可能な顕微鏡の実現が図られ、これにより疾病の原因解明や新薬の開発が促進されるものと期待される。
研究グループは、反射面が楕円形状の2枚の集光鏡を用い、XFELを1点に集光する配置を設計。X線は非常に浅い角度で集光鏡に入射するため、420mmの大きな鏡を開発することで、光源から来るXFELを逃さず、ほぼ全て反射し集光できるようにした。このような大型の集光鏡を原子レベルの精度で作製するには、非常に高精度な加工技術が必要になる。理化学研究所が開発した「ELID研削法」と大阪大学が開発した「EEM加工法」を駆使することで、集光鏡を作製。420mmの大型鏡の表面は、ナノメートルの精度を持つ表面にまで仕上げられた。鏡の材料には、加工のしやすさ等から石英ガラスを用い、原子レベルの精度で表面を加工した後、表面に炭素膜を原子精度で均一にコーティングした。炭素はX線の吸収が非常に小さく、また、融点も高いことから、反射時の鏡表面の損傷を防ぐことができる。
SACLAにおいて集光鏡により集光ビームを形成するにあたり、集光鏡の角度や位置を高精度に調整した後に静止する装置が必要となる。このため新たな装置を開発。SACLAにおいて開発した集光鏡を評価した結果、理論通りの集光サイズ(横方向:0.95μm、縦方向:1.20μm)を確認し、XFELは4万倍に増強されるとともに、XFELによる世界で最も高い集光強度(6×1017w/cm2)を達成した。
超高強度ビームを利用することで、化学反応の瞬間の超高速の原子の動きの観察や、タンパク質など生命活動に重要な分子の原子構造の観察、さらには極限状態の創出が将来期待される。これにより、日常生活を支える優れた触媒や燃料電池などの高機能材料の開発、疾病の原因解明や新薬の開発など、本研究で開発した集光ビームは未来科学を支える様々な先端分野に大きく貢献していくものと期待される。
(詳細は、Nature Photonics on-line Dec. 17, 2012)

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