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東芝、SACLAでレーザピーニング時の金属の内部状態を観察

December 17, 2012, Tokyo--東芝 電力・社会システム技術開発センター 技監の佐野雄二氏らは、金属の表面を強化するレーザピーニング(LP)処理中のアルミ合金内部の変化を観察することに成功した。これは理化学研究所播磨研究所のXFEL(X線自由電子レーザ)SACLAの非常に高い強度と時間分解能により可能になったもの。今後さらに原子レベルで反応を解明することで、加工プロセスの最適化や、高強度、新機能をもった材料の設計が可能としている。
LPは金属表面を強化する加工方法のひとつ。従来から行われている、金属球を対象材料に当てるショットピーニングを、金属球からレーザに置き換えたもの。金属表面に強力なパルスレーザを照射し、その衝撃によって表面を叩いて押し延ばすことにより圧縮残留応力を与えるもので、刀鍛冶に近い手法といえる。さらに東芝では水中でレーザを照射することにより、小型のレーザでも数万気圧を発生させて強度を高める方法を開発している。
ピーニングは金属疲労対策に有効とされ、表面から始まる亀裂を防止したり、それ以上の亀裂を止めたりすることも可能だという。列車の車軸破壊や飛行機の圧力隔壁の破損などの大事故は疲労が原因となっているものも多く、その対策に有効だといえる。東芝ではLPを原子炉の構造物や蒸気タービンなどに適用しているほかに、EVなどのモーターや航空宇宙産業への適用を検討している。
金属疲労対策に有効なLPだが、処理中に材料内部で何が起こっているかについては明らかになっていなかった。SACLAは超高輝度かつ10-14sの短パルスを持つ。一方材料のある種の高速変形は10-9s程度であることが知られており、材料変形に対してSACLAは十分な時間分解能を持つ。そこで今回、航空宇宙産業への適用を検討しているアルミニウム合金についてX線回折法による材料変形のリアルタイム観察を行った。
LPについては、グリーン532nmのNd:YAGレーザのシングルパルス(パルス幅8ns、パルスエネルギー400mJ)をレンズで直径1.5mmのサイズに集光し、水の代わりにアクリル板および真空グリースを通して、厚さ0.1mmのアルミニウム合金の板に裏側から照射。そしてその照射場所に表側から10keV(波長0.124nm)の短パルスX線レーザ光を照射。Nd:YAGレーザの衝撃による圧縮が裏面から入ったあと、表面に到達して反射、消滅していくまでのX線回折像を、数nsの間隔で2次元検出器により撮影した。その回折像から、結晶粒が微細化していく様子や、向きの変動のほかに、化合物の微結晶が生成している可能性が観察された。
今後はさらに変形や析出の理解を深め、LPのメカニズムを解明する。それによってLP用レーザの照射条件やプロセスの最適化を目指すとともに、さらに高い強度や耐食性などを持たせた新材料や表面処理技術の開発につなげたいとしている。

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