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「究極の3Dテレビ」実現に向けたホログラム材料を開発

November 9, 2012, 東京--青山学院大学 理工学部化学・生命科学科の阿部二朗教授、石井寛人研究員の研究グループは、リアルタイムで物体の3次元(3D)情報を記録・再生することが可能な新しいホログラム材料の開発に成功した。
ホログラフィは空間に自然な3D画像を作り出せる技術で、クレジットカードや紙幣の隅にある光る部分などで使用されている。そこでは、画像や数字が立体的に写っているが、実際は画像や数字そのものではなく、その3次元情報が暗号化されてホログラムという材料に記録されている。ホログラムに光を当てると、暗号化された物体の3D画像が浮かび上がる。これまでは、展示やアート作品に、また複写機では複製できないことを利用して、偽造防止などに使われていた。リアルタイムで暗号を記録・再生できるホログラム材料が開発されれば、3D画像の動画を再生できる3Dテレビの開発が実現するため、新しいホログラム材料の開発が求められていた。
研究グループは、光を照射すると瞬時に着色し、光を遮ると速やかに無色に戻る独自に開発した高速フォトクロミック化合物を応用して、暗号をリアルタイムで記録・再生することができるホログラム材料の開発に成功した。このホログラム材料では、物体の動きに応じて、古い暗号が消失し新しい暗号が新たにリアルタイムで記録されるため、3D映像を再生することができる。
今回開発したホログラム材料は、大面積スクリーンにすることも可能であり、今後は新しいタイプの3D映像表示システムをはじめとして、光コンピューター素子、エンターテインメントへの利用が期待される。
研究では、研究グループが開発した高速フォトクロミック化合物(パラシクロファン架橋型イミダゾール二量体誘導体)を応用することにより、物体の3次元情報を表す光の明暗の縞である干渉縞を、色変化や屈折率変化の縞として記録することができるホログラム材料を開発。高速フォトクロミック化合物をアクリル系ポリマーに混ぜることで、光照射により瞬時に着色し、光を遮ると速やかに無色になるフィルム状のホログラム材料を開発した。このホログラム材料に干渉縞を投影すると、光の明暗に応じて、部分的な着色が起きる。干渉縞の明るい部分では着色するが、暗い部分の色は変化しない。このように、干渉縞の光の明暗パターンは、色のパターンとしてホログラム材料に記録される。
一方、高速フォトクロミック化合物は、光照射を遮ると速やかに無色に戻ることから、物体が動いて干渉縞が変化すると、新たに明るくなった部分は着色したままであるが、暗くなった部分は速やかに無色に戻る。このような色変化により、古い干渉縞の情報は消えて、新しい干渉縞の情報が記録される。つまり、干渉縞はホログラム材料上に周期的な色変化や屈折率変化のパターンとしてリアルタイムで記録される。物体が動いて3次元情報が時々刻々変化する場合には、干渉縞もそれに合わせて変化するため、ホログラムに再生照明光を当てると、物体の3D映像が浮かび上がる。
干渉縞のパターンが記録されたホログラムは回折格子の性質を持つので、ホログラムに光を当てて回折される光の強度(回折光強度)を測定すれば、ホログラムに記録された画像情報の記録速度と消去速度を知ることができる。記録する光をホログラム材料上に当てると速やかに回折光が観測され、光照射を始めてから約300msで一定の値となった。一方、記録光の照射を止めると100ms以内で回折光強度はゼロになり、記録が完全に消失したことを示している。古い画像情報が完全に消去されてから新しい画像情報を記録するプロセスは、最短で100ms程度で行えることを意味する。これは、10fps程度で画像更新が可能なことを示している。さらに、このような高速な回折格子の生成・消失は、高速フォトクロミック化合物が光照射により着色し、照射を止めると無色に戻ることに起因することが分かった。
このホログラム材料では、記録に用いた光の波長とは異なる波長の光を照射したり、加熱したりすることなく、室温下で記録光をオフにするだけで記録の高速消去が行える。1つの波長の光だけで干渉縞を記録・消去できる点で、従来のホログラム材料とは異なる全く新しいホログラム材料といえる。さらにこのホログラム材料は、干渉縞を記録するために電圧を加える必要がなく、大面積のフィルムが簡便に作製できる点も他に類はなく、極めて汎用性の高いホログラム材料であるといえる。
(詳細は、www.jst.go.jp)

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