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テラヘルツ波で尾形光琳作「八橋図屏風」を調査

October 31, 2012, 東京--情報通信研究機構(NICT)は、尾形光琳作「八橋図屏風」(1710年頃制作、メトロポリタン美術館所蔵)の内部状態の調査を実施した。
今回の調査では、テラヘルツ波を用いたイメージング技術により、絵の具で描かれた花や橋の部分の下を含む、屏風全面に金箔下地が施され、その金箔の上には銅系を中心とした顔料で彩色されていることが明らかになり、江戸時代の絵画・工芸の技法の解明に貢献した。
NICTは、世界に先駆け、テラヘルツ波帯の電磁波を文化財の非破壊調査に応用する研究を行っている。テラヘルツ波は、X線透過撮影や赤外線~紫外線の反射測定では困難な 絵画の下地層の状態を非破壊非接触で観測でき、これまでに、ルネサンス期の板絵や壁画の構造調査等に利用されている。NICTは、これらの調査結果を超高解像度画像や顔料分析結果などと共に、ナレッジキャピタルのトライアルイベント等で発表してきた。
NICTは、メトロポリタン美術館と共同で、尾形光琳作「八橋図屏風」のテラヘルツ波による調査を、2012年3月にメトロポリタン美術館の収蔵庫内で行った。この調査の結果、花や橋が描かれた絵の具の下の部分にも金箔があり、屏風全面に金箔下地が施されていることが明らかになった。さらに、使われている絵の具は、顔料の粒度が細かいものから粗いものへ重ねられており、その厚さは約0.6mmほどであることも判明。また、断面の観測から、表面部分に金箔の欠損があっても、内部の紙には影響が及んでいないことが分かった。
一方、光琳が同じテーマで描いた国宝「燕子花(かきつばた)図屏風」(1701年頃制作、根津美術館所蔵)は、近年の修復時に 燕子花の花の下に金箔は無いことが報告されている。つまり、これら2作品では下地構造が異なるという事実を新たに確認した。
テラヘルツ波を用いた今回の調査により、尾形光琳が屏風絵の制作に異なる技法を用いていたことが明らかになった。テラヘルツ波技術は、非破壊非接触で、貴重な文化財の内部構造を可視化することができる。NICTは、「今後も、国内外の機関とのコラボレーションにより、「八橋図屏風」以外にもこの技術を適用し、今まで明らかにされてこなかった文化財の歴史や価値を明らかにすることに貢献していく」としている。
(詳細は、www.nict.go.jp)

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