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ルネサンス絵画を赤外反射光でイメージング

June 26, 2012, Washington--破損したり色あせたりした芸術作品の修復では、複雑な細部を調べ、顔料を分析し、肉眼では見えないわずかな欠陥を探すためにレーザや他の最新イメージング技術を用いることがある。この修復作業をさらに改善するために、イタリアの研究チームは、肉眼や現状のイメージング技術では発見できないような問題点を捉えることができる新しいイメージングツールを開発した。
同システムは、Thermal Quasi-Reflectography(TQR)と言われ、中赤外スペクトラム(波長3-5μm)の反射光を用いるイメージング技術。ラキラ大学、ベロナ大学、フローレンスのイタリア国立オプティクス研究所の研究チームは、2つの有名な絵画でTQRシステムの実証に成功した。Chapel of TheodelindaのZavattariフレスコとイタリア、ルネサンスの画家、Piero Della FrancescaによるThe Resurrection(復活)を実証実験に使用した。
従来のIRイメージング技術(>3μm波長)、サーモグラフィは絵画表面の顔料による微妙な温度差を検出する。修復中は、このサーマルマップを利用して可視光では分からない内部の欠陥を明らかにする。
一方、TQRイメージングシステムは全く違う技術を用いており、絵画が発する熱を検出することはしない。逆に、それを最小化しようとする。TQRシステムは、わずかな中赤外光を絵画表面に照射し、カメラに戻ってくる光を記録する。
論文の著者の一人、ラキラ大学(University of L’Aquila)のDario Ambrosini氏によると、この技術を絵画に適用したのは今回が初めて。「この新しい方法は、芸術作品の診断にとって強力で、しかも安全だ」。
すべての物体はある程度の赤外光を発する。物質によって、特定の波長で強く発光するものがあるが、これは温度に依存する。室温(20℃)では、絵画は中赤外(1.1%)よりも長い波長の赤外光で多くのエネルギーを発する(42%)のが一般的だ。
この弱い中赤外光を利用するために研究チームはサーモグラフィの基本ツールを使い、これを逆方向で利用した。絵画は通常、中赤外では明るく光らないので、研究チームはシンプルで効果的な中赤外光源として出力の弱いハロゲンランプを使用した。反射光のみを検出するために、ランプが絵画表面を熱するのを防ぎ、すべての他の中赤外放射源も除去するために特別な工夫もおこなった。
研究チームは、色づけされた表面で材料の区別がよくできるような熱イメージングツールを見いだすためにTQRシステムを開発した。この関連で中赤外波長は他の波長に対して利点がある。遠赤外での研究と比較して、中赤外はコントラストが優れており、鮮明なイメージングが得られる。また、2μm以下の近赤外では分からないような欠陥も検出可能だ。
Chapel of TheodelindaのZavattariフレスコの一部で最初のテストを行ったが、TQRシステムは以前の光学および近赤外の調査で見つけられなかった細部を明らかにした。ベロナ大学のClaudia Daffara氏は、「われわれのシステムは、金装飾が簡単に修復されていた旧い修復も簡単に特定した。TQRシステムは、フレスコのある題材の可視化でも威力を発揮した」と話している。
研究チームは、TQRシステムの能力の評価をさらに進めるために、Piero della Francescaの「復活」も調べた。最も驚いたのは兵士の剣の周辺だった。これは2つの異なるフレスコ技術を用いて塗られていた。この微妙な違いは、NIR写真では発見されていない。
Daffara氏は、「中赤外域を壁画に使用して、重要な細部が分かった」とも語っている。
(詳細は、下記文献)

参考文献
(1) Claudia Daffara et al. 18 June 2012/Vol.20, No.13/Optics Express 14746

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