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シリコン原子の振動を利用して周波数コムの観測に成功

March 9, 2012, つくば--筑波大学数理物質系の長谷宗明准教授、電気通信大学大学院情報理工学研究科の桂川眞幸教授、ピッツバーグ大学 物理・天文学科のHrvolje Petek教授の研究グループは、原子の集団振動(格子振動:フォノン)を操作する技術を開発し、100テラヘルツ(THz=1012Hz)以上の極めて広い周波数帯域を持つ、全く新しい原理に基づく周波数コム(櫛の歯状に分布したスペクトル)の発生と観測に成功した。
光ファイバを用いた光通信に代表されるように、光を振幅(あるいは位相)変調する技術(光変調技術)は、現代社会のインフラを支える基盤技術であり、光変調技術の高速化、大容量化が常に望まれている。また光変調技術を用いた光通信では、変調周波数の高度な安定化(正確な周波数間隔)も大きな課題であるが、デバイス材料として最も重要な半導体シリコンを用いた電子デバイスあるいは光デバイスに関する研究は、ギガヘルツ(GHz)周波数帯域で動作するものがほとんど。これまでの周波数の限界を突破して、さらなる高速化、大容量化、高安定化を達成するためには、THz以上の高い周波数帯域を持つ、全く新しい動作原理の光変調技術や周波数コムの実現が強く望まれている。しかし、半導体シリコンなど固体結晶中の格子振動を発生原理としたTHz帯域の周波数コムに関する研究は、格子振動を操作する技術の確立が困難とされていたため、全く未知の領域だった。
研究グループは、極短パルスレーザ光を半導体シリコンに効率よく吸収させることにより、大振幅のコヒーレント光学フォノン(周波数15.6THz)の励起に成功した。また、このコヒーレント光学フォノンに伴うシリコン表面の屈折率変調を積極的に光変調技術として利用することにより、間隔が15.6THzの櫛状かつ100THz以上の広帯域を持つ周波数コムの発生を世界で初めて実現した。
今回得られた周波数コムは、光周波数ではなくフォノン周波数として現れることから「フォノン周波数コム」とも呼べる全く新しいタイプ。このフォノン周波数コムを、光ファイバに結合することができれば、従来の光通信よりも、1000倍以上高速に情報を伝送することが可能になる。また、今後、光通信や光スイッチなどで利用できる新しい光デバイスの開発において、大きな役割を担うことが期待される。さらに、周波数コムの周波数間隔を高度に安定化することができれば、光通信の高品質化につながるだけでなく、テラヘルツ周波数帯域の周波数物差しとして、超精密分光法や周波数標準などに応用できる可能性も秘めている。

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